目指したのはプレミアムスニーカー 新型レクサスの小型高級車革命
ここ30年の歴史をひもとくと、小さな高級車で破壊的な成功を収めた車種と言えばドイツBMWが展開している「MINI(ミニ)」ぐらいだ。BMWが英ローバーから名作コンパクトハッチバックカーの権利を買い取り、リバイバルヒットさせたのはいわばレアケース。当初は全長3.6m台で、先日国内デビューした5代目でも3.8m台と全長が短いのが特徴だ。 MINIのグローバル販売実績は約30万台。日本でもデビュー以来年間2万台前後の販売台数を維持し続けており、輸入車ブランドとして年間売り上げランキングで、「メルセデスベンツ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「アウディ」などに続いて、5~6位の好位置をキープする。 要するに「小さいけど高級」という概念は根本的に市場に定着しにくい。おそらく人間という生き物は、どうしても「大きい=高い」「小さい=安い」というシンプルな図式にとらわれやすく、特にその傾向がクルマの世界では強いからだろう。 例えばメルセデスベンツで言えば、最新のセダンはボディーの骨格はほとんど同じなのだが、サイズが小さい「Cクラス」「Eクラス」よりも、大きい「Sクラス」の方が“エライ”と感じる人は多いはずだ。小さな高級車という概念は成立しにくく、クルマメーカーにとっては悩ましいカテゴリーなのだ。 ●「高級車を小さくする」という発想が駄目な理由 多くの自動車メーカーが開発し失敗した小さな高級車は、ほとんどが単に高級車を小さくするという発想で生まれたものが多い。メルセデスベンツで言えば「小さなSクラス」を目指す、といった具合だ。 前述したトヨタも、プログレやオリジンは「小さなクラウンやセルシオ」を目指したものだった。プログレは、ほぼ5ナンバーのサイズでありながら、パワートレインはぜいたくに直列6気筒エンジンを搭載。インテリアはセルシオと同等品質で、先進安全もたっぷり盛り込まれていた。 レクサスブランドで投入した、高級コンパクトハッチバック「レクサスCT」も同様だ。骨格は当時のプリウスと同じで、内外装を別あつらえとし、まさにプレミアムコンパクトとして売り出した。ただ、11年続いたものの1世代で消え去ってしまった。18年に「レクサスUX」というサイズ的には全長4.4m台とひと回り大きめのコンパクトSUVをデビューさせたが、こちらも大成功したとは言いがたい。 前述したように、多くの人間は大きい=高い、小さい=安いと考えがちだ。高級車をまねしたのであれば、結局は「本物」、もっと言えば「元祖」がよい、となってしまうのは、もはや人間のさがなのかもしれない。 トヨタがまたもや小型高級車に再挑戦したこと自体、もちろん結構すごいことなのは間違いないのだが、では実際のところレクサスLBXはどこが違うのか。そして新しいのか。結論から言うと、開発陣は新型LBXの発想の原点を「プレミアムなスニーカー」としたという。決して最高級の革靴を目指さず、カジュアルであることをよしとしたわけだ。