目指したのはプレミアムスニーカー 新型レクサスの小型高級車革命
実際に実車を見ると、確かに今までの小さな高級車とは“別もの感”が強い。スタイリングは前がきゅっと絞られ、リアに向けてグラマラスに広がっている。決して高級グレード「レクサスRX」を縮小したような印象は受けない。 ボディーの骨格は、ヤリス クロスと共通のGA-Bプラットフォームだが、別物と言っていいほど補強されている。フロントサスペンションは新設計され、パワーユニットも1.5L直列3気筒ハイブリッドエンジンに振動抑制をするバランスシャフトを搭載することで、静粛性が別次元レベルで高まっている。 走らせてみると、乗り味は意外で、サイズを感じさせない高級車然としたゆったり感や重厚感が強いかと思いきや、正反対。静かで上質でありつつも、コンパクトカーらしいきびきび感を備えている。 インテリアも同様で、本革シートなどを多用しつつも、色使いを含めて非常にカジュアルに仕上げている。まさしく、これぞ走るプレミアムスニーカーといった感じなのだ。 ●ぱっと見は変わらなくても目利きなら分かる、がミソ ここで思い出してほしいのが、海外のハイブランドが発売する高級スニーカーだ。こうした商品は、ぱっと見は大衆的なスポーツブランドのスニーカーと色使いやフォルムはさほど変わらなかったりする。だがファッションにこだわりがある目利きが見れば、革の質感のきめ細かさや発色のよさ、はたまたステッチの奇麗さや履き心地の断トツさが際立っていることが分かる。 新しい視点や世界観を与えてくれるから、分かる人からずればわざわざ高いお金を払ってプレミアムスニーカーを買いたくなるわけで、同じようにLBXなら今まで行かなかったような場所へと遠出したくもなる。トヨタがレクサスLBXを通じて本当に消費者に与えたかったメッセージは、おそらくハイブランドのスニーカーのような「心地よさ」であり、今までになかった「移動の楽しさ」なのかもしれない。「プレミアムなスニーカー」という狙いは、まさにその通りだったのだろう。 小さな高級車という誰もが打ち破れ続けた市場で高い壁を打ち破るには、濃い世界観をトップが打ち出す必要があったのだろうが、もちろんそれを受けて、トップの言葉を信じて現場共通認識を携えて開発に挑むという体制づくりが欠かせない。そこができてしまう当たりさすがトヨタだ。 だからこそ、誰も成功していない市場で成功するためには、今の時代には個人の強い思いが大切なような気がする。プレミアムなスニーカーという発想で生まれたレクサスLBX。新しい概念の小さな高級車を形にした点を、あとは市場がその思いとともにどう受け止めるかどうかにかかっている。
小沢 コージ