「親亡き後を常に考え」心が休まる暇はない知的障害児の子育て 桜井奈々が一番悩んだ「普通のことが普通にできない」
桜井さん:やはり世の中的にイメージする子育てというのは「健常児の子育て」であって、「障害のある子の子育て」というのは限られた人しか知らない現実があるので仕方ないのですが、「言えばそのうちできる」「やっていればそのうちできる」そう思われてしまうとやっぱり苦しいですね。 日本では普通のお母さんでさえ、求められることが多いなかで、障害児のお母さんは求められることがさらに多い。子どもをじっとさせる、騒がせない、泣かせないとか…。本当に難しくて、失敗が許されない。そんなプレッシャーにも耐える日々でした。でも、娘が10歳くらいになって、ようやくラクになりました。理解力が多少つき、落ち着いていられる場面が増えたのかなと思います。
── 幼稚園入園のときは、入園前のプレスクールに問題なく通えていたのに、障害児であることを告げると「トラブルを起こす可能性があるから」とその場で入園を断られたそうですね。小学校進学でも難しいことがあったとか。 桜井さん:娘は知的障害ありの自閉症で、小学校は「特別支援学級」か「普通学級」かで悩みました。今と違って当時は、小学校入学時に道を選んだらその後になかなか変更ができず、その後、義務教育の期間中は、中学も特別支援学級で学び、そのあとも特別支援学校に進む流れでした。6歳でそれを決める勇気がなくて、すごく悩みました。それに高校と違って、特別支援学校を出たあと、どうやって生きていくのかということも想像ができませんでした。ただでさえ幼い娘を18歳で働かせるなんて…と。
いろいろ悩んだのですが結局、普通学級に在籍しながら、週に何時間か個別の指導を受ける「通級」を利用する形での入学になりました。また、娘の気持ちも尊重しました。「知的障害があれば特別支援学級へ」と言われても、娘は「女の子がいるところがいい」と。就学相談の判定は「特別支援学級」でしたが、見学に行ったら本当に女の子が少なくて、それも娘にはネックだったようで「行きたくない」と言っていました。 ただ、勉強がついていけるかは、また別問題でした。実際、娘は黒板を写すことが苦手でした。先生に入学前に相談したら「1年生のあいだは簡単なことを学ぶし、板書もそれほどではない」とおっしゃってくださり、個別のプリントを配って対応してくださることに。本当に感謝しかありませんでした。入学式前に、入学式の練習をさせていただいたりなど、先生方には大変お世話になりました。心配していた小学校生活ですが、特にトラブルなく過ごせました。