ドラムブレーキじゃないの!? ホンダの「インボードディスク」ってナニ?
鋳鉄ディスクを採用するために、独自技術をテンコ盛り!
ルックス的にはサビないステンレスが有効ですが、制動力や操作フィーリングでは鋳鉄製ディスクの方が優勢……というワケで、ホンダが開発した革新的なブレーキが「インボード・ベンチレーテッド・ディスク」です。
構造図を見ても少々難解ですが、まずホイールのハブが非常に大径になっています。その中に鋳鉄製のディスクローターを外周側から固定して収め、ブレーキキャリパーは内周側から挟み込んでいます。ディスクローターをカバーしているので、サビても見えないのがメリットです。 しかしハブに収めてカバーしているため、問題になるのがディスクローターの過熱です。ディスクローターはある程度温度が上がらないと高い制動力を発揮できませんが、かと言って過剰に温度が上がってしまうと制動力が低下するため「ベンチレーテッド・ディスク」を採用しています。 これは重ねた2枚のプレートの間に空気が通り抜けるフィンを設けた構造のディスクローターで、4輪車のスポーツカーやGT系など高い制動力を求めるモデルが採用しています。 ちなみにバイクの一般的な油圧式ディスクブレーキで「ベンチレーテッド・ディスク」を採用する車両は、ワークスレーシングマシンを除けばごく少数です。ホンダの市販車では1980年代初頭の「CB1100R」や「CBX1000」が装備していました。高コストなのでフラッグシップのみが装備したワケです。
一気に拡大したけれど、意外と短命……
こうして「インボード・ベンチレーテッド・ディスク」は、鋳鉄ディスクならでは高い制動力と操作フィーリングを持ちながら、サビを見せないルックスの良さを両立しました。そして初採用の「CBX400F」から、「VT250F」や「VF400F」など当時のバイクブームの主軸となったミドルクラスへの装備を拡大していきました。また、基本的にはシングルディスクですが、「CBX400F」の兄貴分たる「CBX550Fインテグラ」のフロントには、強力なダブルディスクを装備しました。