「泣く子も黙る税調」少数与党の石破政権下で影響力低下 頭越しに与野党幹事長が協議
年末になると、「税調」という言葉が頻繁にニュースに登場する。政党や政府にある「税制調査会」の略で、特に自民党税調は税制改正について大きな権限を誇り、かつては首相も口を出せない〝聖域〟とされた。しかし、最近は官邸の影響力拡大と反比例するように存在感の低下が目立ち、今年末の税制改正議論では、自民・公明両党が少数与党となった影響で、両党の幹事長が税調の頭越しに一部野党の幹事長と実質的な話し合いをする場面も増えている。「泣く子も黙る税調」(自民閣僚経験者)などと呼ばれた時代は昔になりつつある。 ■非公式会合で決定 「政府税調を軽視するのではない。無視する」 往時の自民税調の権力の大きさを語るとき、必ず引用されるのが「税調のドン」と言われた山中貞則氏の言葉だ。1986年に税調会長に就任した後は、当時の中曽根康弘首相からの指示を受け付けなかったという。88年には、世論の反発が強かった消費税導入を進めた。 自民税調は党政調会の中にある政策分野ごとの調査会の一つだが、自律性が高く、1970年代以降は、毎年度の税制改正について実質的な決定権を握ってきた。連立政権になってからは、公明党税調とも連携して秋口から本格的な議論を行い、12月に「税制改正大綱」をまとめるのが一般的だ。 多くの議員が参加して行われる総会もあるが、実際に方針を決めるのは「インナー」と言われる幹部だけが参加する非公式会合だ。現在の幹部は、宮沢洋一会長のほか、森山裕、後藤茂之、石田真敏、斎藤健、上野賢一郎、小林鷹之、小渕優子、福田達夫の各氏だ。 一方、山中氏に「無視する」と言われた政府税制調査会は首相の諮問機関。有識者による議論を経て税制の在り方に関する答申などを行う。 ■会長を事実上更迭も しかし、自民税調の立ち位置は変わってきた。官邸主導の色彩が強まるにつれ、存在感が低下した。象徴的だったのが第2次安倍政権下の2015年、消費税の軽減税率導入に向けた協議が本格化する直前のタイミングで当時の安倍晋三首相が野田毅会長を交代させた人事だ。財務省出身の野田氏は軽減税率導入に消極的で、事実上の更迭だった。 さらに今年は、10月の衆院選で自公が過半数を割り込んだことが、税調の存在感を大きく削ぐ結果を招いている。政権運営に野党の協力を得るために、大きな財源が必要となる減税要求などを飲まざるを得なくなり、税調を飛び越して各党の幹事長同士が政治決着させる場面が増えているからだ。