水道事業を民間委託? 水道法改正の背景と課題とは 坂東太郎のよく分かる時事用語
法改正で今後考えられる課題は?
上記の課題を比較的簡単に解決できる方法がないわけではありません。コンセッション方式を呼びかけても誰も反応しなければ「うちの事業は民間でも立て直せない」と分かるという流れです。しかしこれではコンセッション方式導入の意味がありません。 民間の論理は簡単です。公営では利益が出なくても当社のノウハウがあれば運営権を一括払いで得てでも利益が出せると踏んだ地域ならば応募する……でしょう。前記の通り、料金設定が自由化されているわけではないので端的に申せば「もうかるところ」が人気となるはずです。言い換えると人口が少なく、かつ減少に苦しみ、水道事業も赤字が積み上がっているような地方(まさに官民連携で劇的改善が望まれるはずの地方)には「もうからない」と手を上げそうもありません。 やはり地道に自治体そのものがノウハウを得ていかなくてはなりますまい。静岡県浜松市は下水道事業においてコンセッション方式を導入しています。上水道でも導入を今年度中にも判断する予定でしたが先送りしました。「運営を委託する仕組みや、完全民営化との違いなどが周知されていないため」(毎日新聞2018年12月4日付)という理由のようです。いずれにせよ「魔法の杖」とばかりに飛びつくのは考えものという好例でしょう。
-------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など