シボレー ボルトは謎めいた先進的電動化モデルだった【10年ひと昔の新車】
適度な重厚感を備えて快適な巡航性能を予感
リゾート敷地内で試乗したボルトは、ほぼ市販仕様と言っていいプロトタイプだった。簡単に車両概要に触れておくと、「シボレーボルト」は4人乗り5ドアのフロントドライブ式シリーズハイブリッドモデルである。
シボレー ボルト 主要諸元
●全長×全幅×全高:4498×1788×1430mm ●ホイールベース:2685mm ●モーター最高出力:111kW(149ps) ●モーター最大トルク:368Nm ●発電用エンジン:直4DOHC ●排気量:1398cc ●最高出力:63kW(84ps)/4800rpm ●駆動方式:FWD ●最高速:160km/h ●EV走行可能距離:約40~80km ●EV+レンジエクステンダー走行可能距離:約560km ※EPA準拠 エンジン排気量は諸般の事情(それしかなかった)により1.4L。専用プラットフォームを開発し、16kWhのリチウムイオンバッテリー(重量およそ200kg)はT字型で車両床下のセンター部に置かれている。 フル充電から、うまく走れば最長80kmまでリチウムイオンバッテリー+駆動用モーター(111kW)のみで走るという。その先は再充電を行うか、エンジンで発電用モーター(54kW)を回して電力を駆動装置に送り込む。「ガソリンさえあれば最長560km(EV領域含む)走れる」という点が、ボルト最大の魅力であり、GMが量産車初の長距離走行可能なEVだと喧伝する所以である。 ボディは、空力重視のプリウススタイル。個人的にはディテールの処理(たとえばサイドウインドウ下)が凝っていて気に入ったが、シルエット的には没個性な感も否めない。インテリアはほどよく未来的、というかパーソナルデバイス的で使い勝手もよく、気に入った。 走りの方はどうだったか。まずはフル充電に近い状態で走り出す。わかり切ったことだが、ほぼ無音でヒュルヒュルと走り出す様はEVそのもの。いまだにこれを新鮮に感じてしまうのだから、相当に自分の頭はガソリンで“汚れている”。 最大トルクは368Nmもあり、それがドカンと立ち上がる(ように思えるくらい力強い)から加速力は強烈だ。車重データはまだ未公表ながら、およそ200kgというバッテリー重量の存在を感じさせない。 日産リーフなどに比べると、エンジンが積まれているぶんフロントヘビーに感じる。だが、重いバッテリーが低い場所に搭載されていることもあって、適度に重厚感のある走りをみせる。この落ち着いたクルージング能力は、ボルトの大きな魅力だと言えるかもしれない。 スポーツモードを選べば、モーター出力そのものは変わらないものの、トルクの立ち上がり方が明らかに鋭くなって、よりアグレッシブな走行フィールを得ることができた。 バッテリーの残量が一定レベルにまで落ちてくると、自動的にレンジエクステンドモードへ切り替わる。つまりエンジンが掛かる。発電用モーターが生み出す電気エネルギーがボルトを走らせるのだ。とはいえ、エンジンはずっと掛かっているわけではなく、バッテリー容量の下限を見極めながら、小まめに止まる。 このあたりの制御をさらに精密に計算し、モーターとバッテリーの能力を上げ、もっと高効率な小型ガソリンエンジンを積めば、ボルトの未来はさらに明るくなるはずだ。(文:西川 淳)
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