乳幼児虐待を起こさせないための「親のメンタルケア」とは?【医師解説】
子育てのストレスを減らすためにはどうしたらいい?
編集部:虐待まではいかなくても、子育てによるストレスで悩んでいる人は多いと思います。 青木先生:現在、子どもへの虐待事件は非常に増えています。その背景としては乳幼児や児童への虐待が広く認知されるようになったこともありますが、社会の変化も大きく関係しています。 編集部:それはどういうことですか? 青木先生:地域社会とのつながりが薄れたり、核家族化が進んだりすることで、誰にも相談できずに悩んでいるお母さんは少なくありません。育児から得られる深い喜びとともに育児不安や困難も増しています。 編集部:本来であれば、虐待にいたる前に救うことができればいいのですが……。 青木先生:育児をしていて、不安、焦燥感、不眠、食欲減退、抑うつなどの症状を抱えて苦しんでいる人も多くいらっしゃいます。そのような場合にはぜひ、メンタルクリニックなどを専門とする医院を利用すると良いでしょう。 子育てに関する悩みを専門的に診ている医師もいますし、たとえば当院では乳幼児家族外来といって、就学前の乳幼児とそのご家族に対する外来も行っています。 そういった医療機関などもありますので、地域の公的な子育て支援機関に問い合わせたり、ネットで調べたりして、自分にあったクリニックを選択されることをお勧めします。 編集部:乳幼児家族外来はどのようなことをするのですか? 青木先生:精神科医・臨床心理士・精神保健福祉士がチームを組んで、乳幼児のお子さんとご家族が安らかで幸せな生活を送れるように支援・治療をします。 そのように家族関係、特に親子関係の改善を目指す治療を行う医療機関もありますから、頼ってみると良いのではないかと思います。 編集部:最後に、読者へのメッセージをお願いします。 青木先生:これまでに虐待に至る前の育児困難に苦悩されている親御さんを多く診てきました。また軽症の虐待をされている親御さんにも多くお会いしてきています。乳幼児期はとくに人生で最も濃密な人間関係が親子のなかで展開されます。 それだけに多くの困難が生じることがありますが、それを乗り越えることは可能ですし、そうなれば親として人間として過去の葛藤からより自由になり、子どもとともに大きな成長を果たすこともできます。 苦難のなかにチャンスもあります。その苦難は大きく、また、苦難の頻度が高い場合は、すでにお話しした親族から専門機関までの何かを利用されれば、その前進がより可能になると思います。