名門復活へ、明大ラグビー部がとっぱらった体育会系体質
先輩が後輩を使いに出す。薄暗い部屋で先輩が後輩を正座させて訓示する…。これら学年による上下関係に基づく因習は、日本の体育会系の部活で当然のようにあると思われがちだ。 その類の体育会系体質ともいわれる文化を本格的に絶とうとしているのが、ここ2年間の明大ラグビー部である。所属の関東大学対抗戦Aで、現在、開幕4連勝中。学年を問わず選手が「のびのび」とプレーしている。 裏を返せば、最近までグラウンド内外にややこしい出来事が重なっていた可能性があるということか。いやいや、過去を振り返るのはこの人たちの趣味ではない。「前へ」。このクラブの伝統的なキーワードがそう伝えている。 改革を提案したのは丹羽政彦監督のようだ。選手が「下級生が上級生に言いたいことが言えない」と思うなか、指揮官も「学年同士ではまとまっていても、上下間のまとまりが…」と感知。昨季就任時、主将だったフッカー圓生正義とともに「理不尽なことはなくそう」と話し合った。その流れを今年度も継承している。 当たり前だが、勝負に年齢は無関係。特に15人で肉体接触とボールゲームを重ねるラグビーでは、選手間でのコミュニケーション不足は命取りとなる。「僕は殴られたりはしなかったし、よくわからないんだけど…」。清水建設から出向、家族を札幌に残し部員の寮に住み込む丹羽監督はこう話す。 「社会に出ると、雑用はせざるを得ない。その訓練としても、下級生は上級生を立てて上級生は下級生の面倒を見るという構造は決して悪いことではないと思うんですよ。だけど、理不尽なことはなくそう、と」 鋭いタックルで鳴らすセンター水野拓人副将も、「4年生だから言うわけではないですけど、風通しはいいと思います」。かつては下級生だけで出かける向きのあった「夜食などの買出し」については、「皆で一緒に行くことが多いですよ」と続けた。 今季の象徴、朗らかなプロップ勝木来幸主将も笑う。 「ある程度の上下関係は必要で、もちろん一線は超えさせないようにはしているんです。でもいい伝統は残して、自分がいらないと思った伝統はなくしていっています。こんなこと言ったら、先輩たちには怒られるかもしれないですが」 本当に、いまの下級生は「のびのび」とできているようだ。報徳学園高時代に日本代表候補となった1年生のセンター梶村祐介が「上下関係…。正直、あると思っていたんですけど、先輩たちも優しくて…」と驚けば、2年生のセンター尾又寛汰はこう証言するのだから。 「メイジは上下関係が厳しいみたいなイメージがあると思うんですけど、先輩たちは超、優しくて、下級生がプレーしやすい環境を作ってくれています。どんどん挑戦しろと言ってくれる」