「もう時代後れ」日本の株式会社が見失ったもの 優秀な社員たちの解放が必要な真っ当な理由
個人(特に若い人)が、自分の特徴や能力を存分に発揮していく。組織はそのサポート役として支える。その成果が、顧客や周囲の人々に喜びと感動を与える。 つまり、会社とは、個を光り輝かせる「舞台」であるべきなのだ。 (「序章 会社消滅」より) しかし現状において、その舞台はお粗末なものになっているケースが少なくない。そこで本書においてはそれらを「ヤバい会社」と定義し、そのヤバさを明らかにしている。 ちなみにそれらの情報の多くは、自社の「トンデモな状況」を冷静に見つめている社員からもたらされたものである。
納得せざるをえないのは、組織ピラミッドの上に行くほど「痛い行動」をしているという自覚が薄くなっていくという指摘だ。 とくにトップとなると、非常に問題が多いという。権力を持った(と勘違いしている)経営者や上司ほど、「裸の王様」状態になっているというわけで、いわゆるワンマン経営者がまさにそれにあたるだろう。 無茶苦茶な社内ルール たとえば、著者のもとに寄せられた50代会社員Aさんからの投稿にある次のケースがまさにそれだ。
なんでも、Aさんが勤める会社は盛和塾にハマった創業者が経営する「変な上場会社」で、「無茶苦茶な社内ルール」がたくさんあるというのだ。 いうまでもなく盛和塾は、京セラ創業者の故・稲盛和夫氏が、若手社長に経営哲学を教えるため1980年代に発足させた勉強会である。 その影響力は国内のみならず世界的に広がり、2019年に閉塾するまでに2万6000人もの経営者が「塾生」として学んだという。 Aさんの会社の創業者もそのひとりで、およそ30年前、30代のころに入塾したそうだ。
「創業者は『利他』という経営理念を掲げています。毎朝、フィロソフィと称する冊子の読み合わせがあります。社員を洗脳して統率するためです」 「利他」とは稲盛経営を代表する言葉の1つとして有名だ。「自分のため」でなく、「人によかれ」と経営すれば、周りの人が協力してくれる、という考え方である。 盛和塾の塾生は、多くが自社の経営理念に「利他」を掲げている。 (39ページより) さて、この時点で矛盾に気づく方も多いことだろう。