東急の「自動運転バス実証実験」に京急バスも参加、成果と課題が見えてきた
能見台エリア:自動運転バスが子どもたちに人気で……
能見台は京急グループが大規模な宅地開発をした地域で、グループ全体の新しい価値創造事業の重要拠点となっている。能見台駅から広大な住宅地が広がり、バスの路線網があること、坂道が多いことなどが虹ヶ丘・すすき野エリアによく似ている。能見台営業所で聞いたところ、京急グループの主要な事業エリアとなっている横須賀市、三浦市、葉山町、逗子市も、エリア内に歩道の幅員が狭いところが多く、路線バスにとって道路環境に恵まれているとはいえないという。 だからこそ、京急バスもラストワンマイルの交通整備が必要だと考えていた。横須賀リサーチパーク(YRP、IT関連の工業地区)では自動運転の実証実験も行われたけれども、大学の研究が主体で、京急バスはレベル2要員のドライバーを提供するにとどまり、自社としては成果を得にくかった。そこで東急バスの呼びかけに応える形で事業に参加し、経験と知見を得たい。これが京急バスの参加の経緯とのこと。 「能見台エリア」はかなりテクニカルな設定だった。歩道付きのバス通りもあれば、車がやっとすれ違えるような細い道もある。しかも後半は小学校の通学路だ。そんな道を小さなEVバスがゆっくりと通り抜けていく。公園の入口に保護者と思われる女性が立っていた。事前に学校関係者や町内会などに連絡したそうで、やはり心配なのだろう。 EVバスは東急が保有する車両だ。前回の実証実験で「虹ヶ丘・すすき野エリア」を走っていた。「能見台エリア」を走るに当たり、こちらは京急バスのキャラクター「けいまるくん」を掲げている。私が試乗した時間帯は午後2時ごろで、ちょうど小学校低学年の帰宅時間帯だった。通学路に変わった形のバスがやってきてゆっくり走る。小さくて丸くてかわいい印象もある。そこに「けいまるくん」というフレンドリーなキャラクターがあるせいで、バスが子どもたちに取り囲まれてしまった。当然ながら手動運転に切り替える。「愛される姿も良し悪しですなあ」と添乗員も苦笑いだ。 「能見台エリア」の「信号連動」は1カ所のみ。ほかの交差点は全て一旦停止し、運転者の確認ボタンを押して発車する仕組みだ。どちらかというとEVバスの挙動と一般車両との協調運行の確認が主のようだった。途中の比較的道幅の広い場所で、駐車車両を自動で避けるモードを試そうという話になって挑戦してみたけれど、すぐに対向車が来てしまって中止となった。とにかく安全第一である。通学路を含め、手動運転が多めだった気がする。苛酷なコースだから仕方ない。これも貴重なデータとなったはずだ。