どう防ぐ? 子どもの連れ去り 立正大学教授・小宮信夫
13歳未満の子供が被害者となった今年1~11月の連れ去り事件の警察庁の認知件数が100件に上り、前年同期比で13件増えたと伝えられている。発生時間帯で最多だったのは、夕方の午後4時から6時、下校時間帯や路上での被害が多いという。どうしたら、子供の安全を確保できるのか。防犯や子供に対する犯罪の実態に詳しい立正大学教授の小宮信夫教授に聞いた。 ---------------- 警察庁によると、13歳未満の子どもが連れ去られる事件が、2005年以来9年ぶりに100件を超えた。2005年と言えば、11月に広島市、12月に栃木県今市市と京都府宇治市で、子どもが相次いで殺害された年だ。つまり、事件をきっかけに高まった危機感が、その後の連れ去り件数を減らしたのかもしれない。それがここに来て、元の水準に戻ってしまった。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言えばそれまでだが、なぜ持続可能な防犯対策ができないのか――その答えを考えてみたい。
今年9月に神戸市長田区で小学1年の女児が連れ去られ殺害される事件があった。現場に行ってみると、路上にたくさんの防犯のぼり旗が掲げられ、熱心な活動の一端を垣間見る思いがした。この地域は防犯意識の高い街であるに違いない。にもかかわらず事件は起きた。なぜ犯罪を防げなかったのか。それは、防犯意識ではなく、防犯知識が欠けていたからだ。もっとも、こうした事情はこの地域に限られたことではない。防犯知識の欠如は、日本のどこにでも見られる。それが端的に表れているのが子どもの安全だ。 子どもの安全と言えば、相変わらず、防犯ブザーを渡し、「大声で助けを呼ぶ」「走って逃げる」と指導している。しかし、これらはすべて襲われた後のことであり、犯罪はすでに始まっている。つまり防犯ではない。危機管理の言葉を使えば「クライシス管理」であり、「リスク管理」ではないのだ。 襲われないためにはどうするかという「リスク管理」に比べ、襲われたらどうするかという「クライシス管理」では、子どもが助かる可能性は低い。米ニューヨーク大学のジョゼフ・ルドゥー教授によると、恐怖は思考よりも早く条件反射的に起こるという。とすれば、襲われたら恐怖で体が硬直してしまう可能性が高い。文字通り、思わずすくんでしまうということだ。