どう防ぐ? 子どもの連れ去り 立正大学教授・小宮信夫
こうした物理的に危険な場所だけでなく、心理的に危険な場所も点検する。例えば、落書きやゴミといった街の無秩序のサインが見つかった場所は、誘拐犯が警戒心を抱くことなく近づけるので「入りやすい場所」である。またそのような場所は、地域住民から関心が寄せられていないので「見えにくい場所」でもある。 駅前広場やショッピングモールは、人が大勢いるので一見安全そうに思えるが、人は外的刺激が多ければ多いほど異常な事態に気づきにくくなり、たとえそれに気づいたとしても、その場に居合わせた人が多ければ多いほど援助行動を起こしにくくなる(傍観者効果)ので、やはり心理的に「見えにくい場所」である。 このようにして、地域安全マップづくりは「景色解読力」を高めることができる。景色が発するメッセージに気づけば、危険な状況を予測して、絶体絶命の場面を回避できるだろう。 -------------- 小宮信夫(こみや のぶお) 立正大学教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。警察庁「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」座長。著書に、『犯罪は予測できる』(新潮新書)など。 公式ホームページ「小宮信夫の犯罪学の部屋」