「遭難自体を減らす」長野県が取り組む登山者啓発や届け出義務化
北アルプスの山岳観光シーズンが始まる中、消防防災ヘリ事故で山岳遭難の救助態勢が課題になっている長野県は、「登山する側」への注意喚起で遭難そのものを減らすことが根本策になるとしてここ数年、対策に乗り出してきました。インバウンドの外国人も含め啓発活動の重要性はいっそう増しています。 【写真】北アルプスの山岳シーズン開幕 防災ヘリ墜落の長野県、厳しい救難態勢
登山計画書の提出が倍増
「何よりも山の遭難をなくすことが大切」とする長野県は、県登山安全条例の制定(2015年)で昨年7月1日から県内160以上の「指定登山道」で登山計画書の提出を義務付け(罰則なし)、成果を期待しています。 昨年12月の届け出件数は北アルプス、八ヶ岳連峰など各地の山域で合計4823件、届け出の登山者数は1万476人で、前年同月の2305件、5265人に比べほぼ2倍。県観光部の山岳高原観光課は「条例による提出義務化で趣旨が伝わり、届け出が増えた。今後もPRを進めたい」としています。そして「登山を準備する計画段階が大切なので、安全への気配りをしてほしい」と登山者に訴えています。 長野県は、届け出により遭難時に家族など関係者からの情報収集や救助態勢の立ち上げが素早く進められるとしています。
登山ルールが通用しない外国人も
北アルプスには以前から3000メートル級の山での訓練目的などで韓国の登山隊や外国の一般登山者が多数訪れるようになり、山の国際化が進んでいます。27日の開山祭に多数訪れた台湾や欧米の観光客も今後登山者として再訪する可能性があります。 国情の違いなどからこれまでにも遭難時の対応の行き違いなどが指摘されたことがあり、国際化は山の安全面でも課題になりそうです。以前のケースでは、標高の高い雪山の尾根で立往生した数人の外国パーティーが「故障者だけをヘリに収容させて本隊は登山を続行する」と主張、救助隊が強く説得して全員を収容したこともありました。「故障者や病人が出たら撤退」といった登山のルールが通用しない状況も出現します。 こうしたことから長野県は県登山安全条例に基づいて「登山を安全に楽しむためのガイドライン」を昨年策定。登山前の心構え、計画、登山中の注意、宿泊、リスク回避などの項目を掲げ、(1)自分の体力、経験などを考慮してルートや季節を選ぶ、(2)山では早出、早着を心がける、(3)登山計画書の提出、山岳保険への加入、(4)単独登山は死亡、行方不明になる危険性が高いという認識を持つ――など多くの注意点を挙げています。