福井県の地銀と新聞社が立ち上げた地域アプリ、設立の背景からオープンデータ化、地域通貨やMaaS機能まで聞いてきた
データ活用で課題解決へ、福井県のオープンデータ化にも
ふくアプリの役割は、サービスの提供に加えて、その利用から取得されるデータ活用にも広がる。 2022年10月7日~9日に越前市、鯖江市、越前町で開催された地元の工房などが集まるオープンファクトリーイベント 「RENEW」では、ふくアプリに参加店舗で使えるデジタル地域通貨「RENEWpay」を導入。ふくアプリで5000円入金すると6000円分のRENEWpayを付与する仕組みを提供した。 この取り組みは、来場者へのインセンティブだけでなく、来場者の属性や購入品の実態が分からないというRENEWの課題解決に向けたデータ収集の目的もあった。ふくアプリでは、チャージ時に利用者の基本4情報の入力を求めた。 小林氏によると、期間中の利用者数は479人、合計決済額は約500万円。利用者の41%が県外移住者。県内移住者は飲食関連の決済が多く、男女別でも、男性の方が1回あたりの消費額が大きいなど決済額の違いがデータとして取得できたという。 また、2023年1月からは全国旅行支援の福井県電子クーポン事業「ふくいdeお得キャンペーン」でも活用。独自システムで、クーポンを運用したのは全国的にも珍しい事例だ。ふくアプリ加盟店約3000店舗で約15万人が利用し、決済額は約7億円。その決済データをベースに、旅行支援事業の終了後も来県者との関係人口拡大のツールとして活用している。 さらに、この取り組みの画期的なところは、収集したデータを、福井県観光連盟が中心となり、さまざまな地域事業者が立ち上げたデータ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)の「福井県観光分析システム(FTAS)」でオーブンデータ化したこと。一つの事業にデータを閉じるのではなく、地域全体でそれを利活用し、地域全体の価値を高めていくのが目的だ。 例えば、「ふくいdeお得キャンペーン」で取得した決済データを、県内の地域ごとの決済規模をマップ上で見える化した。このほかにもFTASでは、さまざまなデータをオープン化している。 小林氏は「オープンデータはマーケテイングとして広がりを見せつつある。銀行の業務でも、オープンデータを利用して、取引先にさまざまな提案ができるようになるのでは」と期待を込める。