「あなたなら分かってくれるよね?」私を“ルール”で縛りつける友人。リアルな恐怖を味わえる「本当にあった怖い話」を描いた漫画4選【書評】
その物件、告知事項アリ 建築デザイナーが明かす怖い部屋
『その物件、告知事項アリ 建築デザイナーが明かす怖い部屋』は、建築デザイナーとして働く著者の宮本ぺるみ氏が実際に関わった物件と、その周辺で起きた出来事を漫画化したもの。はじめに紹介されているのは、とある古民家のフルリノベーションを請け負った時の物語だ。
現地を訪れたぺるみは、前の住人が使った家具もそのまま、畳がカビて腐っている酷い現状を目の当たりにする。さらに家の外には墓地があり、そこに白い人影が……。実は霊感があるぺるみは、ほかにも家の中で走り回る黒い人影も目撃していたが、住人に言うこともできず、そのままリノベーションを進めるのだった。 無事に完成までこぎつけたものの、のちに家主から「あんたんとこの設計ミスのせいで変なことばかり起こる」という怒りの電話が入る。そこで顧問弁護士を連れて再び問題の家へ出向いて調査してみると、この物件がとある“告知義務”を怠っていたことが発覚する――。 物件の告知義務など知っておいて損のない情報も紹介されていく同作。ホラーとしてもお仕事漫画としても楽しめるので、興味のある人はぜひチェックしてみてほしい。
東京怪奇酒
累計発行部数20万部超の話題作「東京都北区赤羽」シリーズを手がけた漫画家の清野とおるさん。一癖も二癖もある赤羽の人々をユーモラスに描いたエッセイ漫画で、2015年には山田孝之を主演に据えたテレビドラマも放送された。
そんな清野さんが赤羽の次なるターゲットに選んだのが、心霊現象。2020年に刊行された『東京怪奇酒』では、一度でいいから「オバケ」を見たいという清野さんが、知人友人から直接聞いた怪奇現場に足を運んで酒を飲む「怪奇酒」を実践した記録が描かれていく。 幽霊がいるかもしれないという恐怖感を抱えながら、飲酒することで生じるドキドキ感とゾクゾク感が次第に快感へと変わっていくという「怪奇酒」。実録ということでリアルな怪談が味わえる上に、清野さんによる秀逸なお酒のチョイスやツマミも紹介されているためグルメ漫画としても楽しめる。作者しか知らない極上の快楽を、ぜひご覧あれ。 生々しいリアルな恐怖を味わいたなら、実体験をベースとしたホラーが最適。ただし、夜に一人でトイレに行けなくなるかもしれないので、注意が必要だ。 文=ハララ書房