ラクダをめぐる冒険~リヤド(後編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■ラクダをめぐる晩餐 さて、今回は朝昼夕と会議場から食事がサーブされる仕組みだったので、なかなか外に食事に出かけるチャンスがなかった。2日目の夜には食事の用意がなかったので、ナムと連れ立って食事に出かけることにした。「和食にするか? それとも韓国料理にするか?」とせがむナムを振り切って、私にはどうしてもトライしたい料理があった。それは「キャメルミート(ラクダの肉)」である。おいしそうな感じはしないが、ラクダの国に来た以上、それにトライしないわけにはいかない。 Google Mapsでめぼしい場所を調べ、ホテルからほど近いレストランにUberで向かう。到着した店は、客もいないさびれた感じのところだったが、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。英語のわからない店員だったので、とりあえず席につき、身振り手振りで注文すると、出てきたのはこんな料理だった。 なんとこの店は、キャメルミートならぬ、キャメルレバー(ラクダのレバー)の専門店だったのである。最初は見た目に驚いたものの、食べてみるとなかなか悪くない。鶏の砂肝に近い食感で、牛のセンマイぽくもあり、ザクザクとした噛みごたえ。味も砂肝と牛豚のレバーの間のような感じで、レバニラ炒めのレバーのような風味もあるといえばある。残念ながらこの国ではお酒は飲めないが、ビールとめちゃくちゃ合いそうな料理だった。これがふたりで33リヤル(約1200円)と、なかなかお得な夕食となった。
■副鼻腔炎と共に去りぬ 気温の低さは想定外だったが、空気の悪さは想像通り、いや、それよりも悪いものだった。乾燥に加え、砂埃が舞っているからか、とにかく空気が悪い。キャメルレバーを食べた後にナムと街中をすこし散策したのだが、乾燥と空気の悪さで鼻の奥がずきずきと痛む。 寝るときにも、鼻が乾燥しないようにずぶ濡れにしてつけたマスクが、1時間もしないうちにカラカラになってしまう。気休めと思って持参した携帯加湿器がいい仕事をしてくれて、これがなかったらちょっとヤバかったかもしれない。会議中もとにかく、やはりバカのひとつ覚えのようにカモミールティーをがぶがぶと飲んでいた。 会議を終えて、帰路に着く。復路も往路と同様、ドーハで長時間の乗り継ぎ待ちの時間があった。やはりラウンジでハーブティーを飲んだり、のど飴をなめたりしながらコラムを書き、すこし仮眠をした。 そして目が覚めると、あれ...... ......いつの間にか、鼻が治っている! どうやら、サウジの過酷な環境で鼻が悲鳴を上げていただけで、副鼻腔炎そのものはいつのまにか治っていたらしい。 最後の最後に、嬉しい誤算があった。それでもやはり、完治まではおよそ2週間を要したことになる。 ともあれ、ドーハから羽田に向かうカタール航空の機内では、無事に治ってくれたことを祝して、晴れて2週間ぶりのアルコール(シャンパン)をたしなみ、ゆっくりと眠りについたのであった。 文・写真/佐藤 佳