「我が子の生活に合わせられる」別の仕事も経て、復職した保育士が語る 保育現場の利点と課題 #こどもをまもる
賃金、処遇の問題が一番
都道府県や市町村などが、それぞれに復職支援をするケースもある。保育士の住まいを用意したり、資金の貸し付けをしたり。復職した保育士のインタビューを、冊子や動画にして公開する団体もある。 改めて、保育士が復職をためらう理由はなんだろうか。令和4年版「厚生労働白書」を見ると、理由が浮かび上がってくる。 まず、退職理由としては、「人間関係」「給料が安い」「仕事量が多い」「労働時間が長い」が多い。また、保育士が再就業する場合の希望条件としては「通勤時間」「勤務日数」「勤務時間」が多く、柔軟な働き方を希望している。潜在保育士が就業を希望しない理由は、処遇や労働時間が希望と合わないという理由のほか、「責任の重さ・事故への不安」「ブランクがあることへの不安」が挙げられる。 こうしたデータをふまえ、公立保育園に40年以上勤めて退職したCさんに、現場で経験した課題を聞いた。Cさんは、「賃金、処遇の問題が一番だと思います」と言い切る。「昔は、東京都でいうと、民間と公立の保育士の格差是正のための補助がありましたが、なくなった。それで民間が苦しくなって。家賃補助などがあっても、よほど熱意がないときついですよね」 厚生労働白書によれば、全産業の2021年の月収平均は35.5万円、保育士は30.9万円と下回っている。 「処遇改善の賃金アップの取り組みもありましたが、微々たるもの。子どもを見る保育って、命を預かることです。朝7時からの早番で、カギをあけなきゃと思ったら、緊張で何度も夜中に目が覚める。遅番で遅く帰ったら、家族のいる人はそのケアをどうするか。担任になると、日誌を書いたり、行事の準備、保護者の対応など、とにかくやることが多い。持ち帰ってグッズを作ったりして、サービス残業や長時間労働になる。燃え尽きでやめたり、体を壊したりする保育士も少なくありません。コロナ禍は、声かけやスタッフ同士の交流ができなくて、心を病む保育士も多く、余計に人手が足りないと聞きます」 コロナ禍には、消毒や衛生、感染症が発生した際の対応に振り回されて、現場で働く人たちは疲弊した。また、近年の保護者はクレームが激しくなっており、ちょっとしたけがなども保育士が保護者本人に謝らないとトラブルになる。そうした中で、バスへの子どもの置き去りや、不適切な保育などマイナスの面が報道され、つらいイメージが先行してしまっている。