泥の中を走りボロボロの車を乗り継ぎ「命がけの逃亡」...ロシア政府に追われたジャーナリストの思わぬ結末とは...!?
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第50回 『“ロシア政府”に見つかれば終わり...電波の届かない国境付近で繰り広げられた生死を賭けた「緊迫の脱国劇」』より続く
真っ黒な手の平...冒険の終わり
それから500メートルほど歩くと、森の中の道にボロ自動車が停まっていた。わたしたちは後部座席に倒れ込み、渡されたボトルの水をガブガブと飲んだ……。 「ボスポラス海峡を2回泳ぎ切ったか、ハーフ・トライアスロンをやりきったような気分ね。たぶん人生で最高のトレーニングだったわ」 わたしはほろ苦いジョークを言った。 「スーツケースを持って泥の中を走る障害物競走ね」 真っ黒な手の平を見てアリーナがこの冒険にコメントした。 わたしたちは笑ったが、引きつったような笑いだった。クルマは村はずれにポツンと立つ一軒家の中庭に入って行った。年配の女性が迎えに出た。わたしたちを一瞥すると、女性は風呂場へ案内してくれた。一時間以上もかけて、わたしたちはスーツケースと靴の泥を落とした。 「ここは危険だ。国境が近すぎる。この村ではみんな顔見知りだからね」 アントンが状況を説明した。 「何か食べたら先へ急ごう」
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