泥の中を走りボロボロの車を乗り継ぎ「命がけの逃亡」...ロシア政府に追われたジャーナリストの思わぬ結末とは...!?
ついに手に入れた「身の安全」
外は明るくなり始めた。黒いフォードの後部座席に座ると、あっという間に寝入った。 「着いたよ。ここが終点だ」 アントンがわたしたちを起こした。 「あんたたちをここへ連れて来るように言われたんだ」 「どういうこと?」わたしは戸惑った。 「首都に行くはずなんだけど」 アントンは肩をすくめた。アントンはわたしたちを煉瓦造りの平屋に連れて行き、そこで待つように言った。中にはわたしたち以外にも人がいた。隣の部屋からロシア語が聞こえた。 隣の部屋にはモスクワから来た3人の若者がいた。動員を逃れてきた若者たちだった。アントンは、わたしたちがいるのが3人にバレないように、部屋から出るなと言った。インターネットにはもう、わたしが逃亡したというメッセージがあふれていた。 わたしはインターネットの配車サービスで、わたしたちを首都まで乗せていってくれるドライバーを見つけた。 「もう何台目のクルマだか、わからなくなっちゃった」 シルバーのSUV車に乗り込むと、アリーナが言った。 「7番目のクルマよ。これで最後だといいけど」わたしは言った。 逃亡から3日目、わたしたちは大きな邸宅に着いた。ビデオカメラから顔を背け、急いで中へ駆け込んだ。わたしたちを待ってくれている人たちがいた。そこでようやく、ついに自分たちが保護され、身の安全が完全に確保されたことを感じた。
マリーナ・オフシャンニコワ
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