名車CBX400Fに初採用! 80年代ホンダの画期的ブレーキ機構「インボードディスク」が短命だったワケ
インボードディスクが短命だった理由
そんなインボードディスクですが、前述の通り、実は短命に終わったブレーキシステムでした。おそらく、最後に搭載したのは、1986年に登場した3代目のVT250Fだった気がします。 しかも、そのTV250Fですら、1987年には、通常のディスク露出タイプのダブルディスクブレーキ仕様車を追加。インボードディスク仕様も一時期併売されましたが、徐々に消滅の運命をたどりました。 インボードディスクが廃れた背景には諸説ありますが、そのひとつが、筆者も体験したッメンテナンス性の悪さがあるでしょう。 前述の通り、インボードディスクでは、ブレーキパッドの交換でも、ホイールの脱着が必要だったのは、かなり面倒だった点。ちなみに、最近、行きつけのショップで、レストア中のCBX550Fインテグラを見かけたのですが、作業はかなり大変そうでした。 それもそのはず、MVX250FやVT250Fなどは、フロントシングルのみインボードディスク(リアブレーキはドラム式)。対するCBX550Fインテグラは、前後共にインボードディスクを採用。しかも、フロントは、ダブルのインボードディスクで、ショップの話だと、一般的なダブルディスクのフロントホイールと比べ、かなりの重さ。脱着するだけでも、相当に苦労するとのことでした。 また、外部露出型のオーソドックスなステンレス製ディスクブレーキが、性能的に鋳鉄ディスクを使うインボードディスクと同等か、それ以上になったことも背景にあるでしょう。より薄くできるなどの材質面、放熱用のスリットや穴を加工できるようになるなどの技術面の両方で進化。さらに、ブレーキパッドの性能向上などとも相まって、トータル的に、メンテがしにくく、コストもかかるインボードディスクを採用するメリットが少なくなったことが要因だといえます。 まさに、バイク用ブレーキの過渡期に登場したのがインボードディスク。短命であったにせよ、そのユニークさは当時を知る筆者などにとって、今でも高い存在感を持つバイクの機能のひとつだといえます。
平塚直樹