【梨泰院雑踏事故】「助けられず申し訳なかった」警察の隠ぺい、早すぎる“風化”…1年間を記者が振り返る
原田記者 「コロナが明けて人出は増えることはわかっていたわけです。しかも所轄警察署の中で『いつもよりも人出が増えるから警備体制を手厚くするべきだ』という報告書まで実は作られていたんですよね。それが事後は明らかになるんですけども、結局その報告書というのが警備計画に生かされることなく、警察内部で握りつぶされてしまっていたわけです」 その後の捜査で、事故の予防を怠った責任が特に重いとされた所轄警察署の署長など6人は、業務上過失致死などの疑いで逮捕されました。 原田記者 「ただ責任を問われたのは警察署の幹部レベルであって、閣僚だとか大統領だとか、そういったレベルでの謝罪や責任をとるという姿勢があるべきじゃないかということで、一部遺族が怒りを強めていた」
■半年で“風化” 政治対立に巻き込まれ…遺族の思いは
政府の責任を含めた徹底的な調査を願う遺族たち。その願いは政治対立に飲み込まれていきました。 原田記者 「韓国の社会の特徴ではあるのですが、遺族が政府を批判するような動きになってくると、これに野党が加担してくるんですね。政府としては、遺族が“野党と一体“になっているので、遺族に完全に同意することはできないという姿勢になってしまった」 遺族が外国メディア向けに開いた会見では、遺族の思いというよりも野党の主張を代弁するような発言が目立つこともあったといいます。 事故から半年がたち、どうすれば遺族の純粋な思いを伝えられるのか悩んでいたころ、ある遺族と出会いました。
当時22歳だった二女を事故で亡くした、チン・ジョンホさん。韓国政府与党の党本部の前で悲しそうな顔をしてプラカードを掲げていました。 話をきいてみると、抗議活動に参加するのは初めてだといいます。チンさんは、徹底的な真相究明をしてこそ「娘と会ったときに堂々とできる」と話しました。 原田記者 「僕がショックだったのはですね、社会の無関心。やっぱり政治の対立が深くなってしまうと、みんな『またやってるな』という雰囲気になっちゃうんですよ。だからみんな見て見ないふりをする。こんなに風化するの早いのかなって」 事故から半年が経過していたが、チンさんのスマートフォンの待ち受け画面は娘との家族写真でした。