【梨泰院雑踏事故】「助けられず申し訳なかった」警察の隠ぺい、早すぎる“風化”…1年間を記者が振り返る
日テレNEWS NNN
韓国・ソウルの梨泰院(イテウォン)で150人以上が亡くなった雑踏事故から29日で1年。韓国では事故をきっかけに新たなトラブルも起きていました。ソウルで事故を取材した原田敦史記者に話をききました。
■ハロウィーンの週末、繁華街の中心で起きた衝撃的な事故
2022年10月29日土曜日、ハロウィーンを楽しむ若者らでにぎわう街中で事故は起きました。 当時NNNソウル支局の支局長だった原田敦史記者は、偶然梨泰院で食事会をしていた妻からの電話で事故を知ったといいます。
原田記者 「『道にたくさんの人が倒れている』と『救急車が本当にたくさん見たことないぐらい集まっていてものすごいことになってるんだけど、何か知ってる?』と聞かれたんです。私はその時全く何も知らなくて」
■“群衆雪崩”で若者ら158人が犠牲に…専門家の分析は
事故現場となったのは、梨泰院駅のメインの出口と飲食店が集まるメインストリートを最短でつなぐ路地。幅3.2メートル・長さ40メートルで、およそ10度の傾斜となっています。 原田記者 「駅に向かう人、駅から街に出てくる人の流れが交錯して、身動きが取れなくなって、結果的に事故になってしまったというふうに分析されている」 群集事故に詳しい関西大学の川口寿裕教授は、1平方メートルあたり10人以上が密集した状態となり、群集雪崩が起きたと分析します。
関西大学 川口教授 「たとえば右と左の力が同じ力で押さえられれば耐えられるんですけれども、急に左の人がすっとしゃがむなどしていなくなると、左から押す力がなくなるので、右から押されて倒れるしかなくなってしまうというかたちです」 この雑踏事故で、日本人2人を含む158人が命を落としました。この人数に加えて、友だちを亡くした高校生1人がのちに自ら命を絶ちました。そのため、159人の命が犠牲になったと韓国社会では受け止められています。
■事故を防ぐことはできなかったのか…問われる“大人の責任”
事故の後、韓国社会は重たい雰囲気に包まれました。 原田記者 「(事故)直後から現場に行くと、本当にたくさんの花束だとか、あと壁一面にメッセージが貼られているんですよね。そこで多く書かれていたのは『大人の責任』。『助けられなくて申し訳なかった』と書いている人がたくさんいたんですけど、それを見た時にはやはり私も管理する側の年齢に近いので、そして実際、日本人留学生も2人亡くなっていますから、社会全体、そして大人全体として責任が大きいんだなということを突きつけられた気持ちになりました」 事故後に明らかになったのは、警察の対応の不備でした。