<わたせせいぞう>画業50周年 今年80歳「生涯現役」 名作「ハートカクテル」誕生の裏側
「松岡さんとは昔、一緒にロスに行ったことがありました。日米文化会館で展覧会があって、横にホールがあるからジョイントコンサートをしたんです。赤木りえさんがフルートで、僕はマラカスを持ってステージに立ちました。練習したんですよ。松岡さんとはずっと家族ぐるみのお付き合いだったんです」
音楽は、作品を描く上でのインスピレーションの源になっている。
「音楽の力を借りているんです。パブロフの犬のようなもので、音楽がかかると世界が広がる。一発でその世界に連れて行ってくれる。絵は世界が限定されるけど、音楽は宇宙のような広がりがあり、想像が膨らんでいく。音楽には勝てません」
レトロモダンな世界が人気のイラストレーターのマツオヒロミさんとの短編マンガが、季刊誌「イラストレーション」(玄光社)で連載されていることも話題になっている。マツオさんは、わたせさんのファンであることを公言しており、わたせさんの代表作の一つ「菜」に特に強く影響を受けているという。マツオさんとのコラボは「ハートカクテル」と同じ4ページで、わたせさんがネームを担当している。
「コラボは初めての試みです。短編マンガは4ページなのですが、マツオさんは『4ページは難しい』と言うんですね。「ハートカクテル」も4ページで、栗原さん(『ハートカクテル』の編集を担当した栗原良幸さん)は『4ページはあなたの世界でしょ』と言っていただいたことがありました。一番いいところを描いて、あとは読んだ人に考えてもらう。俳句の世界のようですね」
「今、4ページを見直しています。50周年の節目として、『ハートカクテル』の新作を描こうと思います。色彩でいうなれば、アジア・中国・上海の色です。『ハートカクテル』は1983~89年の作品。その後描いた『ハートカクテル・イレブン』は絵本で、『ハートカクテル カラフル』はアニメ用の作品で流動的な枚数でした。だから4半世紀ぶりの作品になります。テーマは恋愛、あたたかさ、平和です。また上海を舞台にミュージカルの原作にもトライします。テーマは同じく愛と平和です」