<わたせせいぞう>画業50周年 今年80歳「生涯現役」 名作「ハートカクテル」誕生の裏側
わたせさんの作品は、美しい空が印象的だ。空や背景の一部などは色を塗らずに、色を指定している。
「人物や花はマーカーで色を塗っていて、空などはCMYKを数字で指定しています。今は、この空の色はCMYKで……と考えちゃうんです。職業病ですね。最初の頃は、印刷所で職人の方が浮世絵のように色を付けていました。双葉社の編集者に教わったことなんですけど、コミックでそんなことをしている人はいませんでした。最初は簡単な指定だったけど、今は複雑になっています。デジタルになって、コンピューターでできるようになってからは、選択肢がたくさんありすぎて、迷ってしまうのですが」
風景は自身で撮影した写真を参考に描いている。日本だけでなく、米国、イタリア、フランスなど各地を旅する中で出会った風景から作品が生まれることもある。
「毎日撮っています。旅行をする時も必ず撮影しています。今はスマホですけどね。仕事にすると何か嫌ですから、感動する風景を撮ろうと思ってやっています。空もそうです。雲の写真をたくさん撮っています。雲にも表情がありますし」
約50年描き続ける中で、風景の変化をどのように感じているのだろうか?
「変わりましたね。東京はものすごく変わっています。東京は、本当にこんな街づくりをしていいのか? とも思います。こんな大きな都市に新しい大きなビルがどんどん建っている。地震が多い国ですし、耐震はしているのでしょうが、古い建物や高速道路はそうではない。大きな地震があったら、どうなるのか? と考えてしまいます。ビルを描くのは楽しくないですし。自然がいいですよ。必ず草木や山などグリーンを描いています。やっぱりホッとしますし、海や空は気持ちいいですから」
◇4半世紀ぶり「ハートカクテル」新作も
「ハートカクテル」は、1980年代に圧倒的な支持を集めた。2023年には新作テレビアニメ「ハートカクテル カラフル」が制作され、NHKで放送されるなど、リバイバルヒットしている。連載当時は生まれていなかったような若い世代のファンも増えている。松岡直也さんらが手掛けたサウンドトラック「ハートカクテル オリジナル・サウンドトラックス」も2月に発売される。