「元夫とは離婚後のほうがずっといい関係」20年以上若者や家族を支援する女性の思い「多くの人が『いい母』の呪縛に苦しんでいる」
── 素敵な関係ですね。 高橋さん:家族だからこそ、距離が近すぎると、相手に求めることが増えてしまって、いがみ合わなくてもいいはずなのに責め合って、「こんなはずじゃなかった」と後悔する方向に流されることもあると思います。私も、結婚していたころは、おそらく夫に対して支配的な接し方をしていたように思います。その影響は、子どもにも及んでしまう。 距離が近いといろいろ嫌な部分も見えすぎて、相手にぶつけたくなることもあると思います。そうなったときは離れてほしいですね。
── ふたりのお子さんを育てながら、子どもや若者のために積極的に活動されていますが、ご家族は応援してくれていますか? 高橋さん:そうですね。長女は、私が相談者とケンカしたり、「あの野郎!」みたいに毒づいたりしていると、「お疲れ」と言って話を聞いてくれます。私もカッコつけずに、「もうやってられないよ」などと愚痴って。でも、私が電話で相談者の方に怒鳴っていると、「相談者の人がかわいそう」と娘から言われることもありますけど。息子はゲームが大好きで、もうそっちで頑張れって感じです(笑)。
■虐待から逃がれた人と地域の人がお酒を囲む場をつくりたい ── 今後の目標を教えてください。 高橋さん:現在、東京・国分寺の「ゆずりは」で、児童養護施設や里親のもとを満18歳くらいで離れた子どもや若者、虐待から逃げてきた人たちの相談を受けていますが、もうひとつ、新しい場所を東京・江東区にもつくっているんです。「ながれる」という名前で(2025年春オープン)、小さなビルですが、そこには虐待から緊急避難してきた人たちが宿泊できるシェルターになっています。地域の人たちもふらっと立ち寄れて、「今日逃げてきた人がうえに泊まっているんだよ」みたいに、みんなで一緒にお酒を飲んだりできるといいなと思っています。
これまで私が関わってきた自立援助ホームや「ゆずりは」は、プライバシーや安全を守る意味で、支援する人と相談者だけが中心の閉じられた空間になっていました。でも、新しい場所では、地域の人たちも一緒にゆるやかにつながっていけるような場所がつくれたらと思っています。子育てでキリキリ舞いのお母さんたちにも、「お迎えの前にちょっとおいで」と声をかけると、「楽しそうだから寄ってみようかな」と思ってもらえるような場になるといいですね。
PROFILE 高橋亜美さん たかはし・あみ。「ゆずりは」所長。1973年、岐阜県出身。日本社会事業大学社会福祉学部卒業後、フリーランスでお菓子作り、バックパッカーで海外を旅するなどした後、自立援助ホームでの仕事に従事。2011年よリ現職。著書に『子どもの未来をあきらめない』(明石書店)などがある。 取材・文/高梨真紀 写真提供/高橋亜美
高梨真紀
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