「昨日の夕食」「服をしまった場所」が思い出せないのは認知症?<老化によるもの忘れ>と<認知症>の根本的な違いとは
厚生労働省が公開している2020年の「介護保険事業状況報告」によると、施設に入所している<寝たきり>の人は300万人以上もいるそう。そのようななか、高齢者のリハビリを20年以上続けてきた理学療法士の上村理絵さんは「老化することを最後まであきらめなければ、回避できる寝たきりもたくさんある」と話します。そこで今回は、上村さんの著書『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』から、老化に負けない元気な体を手に入れる方法を一部ご紹介します。 【図】老化によるもの忘れと認知症の違い * * * * * * * ◆服をしまった場所が思い出せないのは認知症? 2025年には、5人に1人が認知症になる。 そんな予測データがあり、さまざまなメディアが盛んに警鐘を鳴らしていると、ちょっとしたことでも気になって、不安が生じてしまいますよね。 そこで、認知症と認知機能の低下についてお話ししたいと思います。 さまざまな認知機能のうち、記憶力に関しては、18歳前後をピークに加齢とともに衰えていきます。 40代後半ぐらいになると、多くの人がもの忘れを経験するようになり、記憶力に加え、視力、計算力、集中力、注意力などの認知機能の衰えを感じるようです。 そのため、なかには「自分は認知症では?」と疑いを持つ人もいるかもしれませんが、老化によるもの忘れと認知症は根本的に異なるものです。
◆老化と認知症の違い 次の図版を見てください。 老化によるもの忘れと、認知症によるもの忘れには、次のような大きな違いがあります。 たとえば、夕食に何を食べたか覚えていないというのは、認知症の症状ではなく、単なるもの忘れです。 この場合、自分が夕食をとったことは覚えており、自分が忘れているという自覚があります。 記憶の一部だけを思い出せないということは、老化によるもの忘れでは珍しくありません。 それに対して、夕食をとったこと自体を覚えていない、自分が体験した出来事を丸ごと忘れてしまうのは、認知症の典型的な症状です。 認知症の人は、食事をしたこと自体を覚えていないので、「なんで食事をさせてくれないのか」と怒ったり、何度も食事を催促したりすることがよくあります。 こうした行動をとってしまうのは、認知症の中核症状の1つ、「記憶障害」によるものです。