「昨日の夕食」「服をしまった場所」が思い出せないのは認知症?<老化によるもの忘れ>と<認知症>の根本的な違いとは
◆これが認知症の中核症状 皆さんは、服を着ようとして、着られずに困ったことはありますか? おそらく、そんな経験はないでしょう。 むしろ、ほとんど無意識のうちに衣服を身に着けているという方が多いのではないでしょうか。 ところが、認知症を患っている人のなかには、服の着方さえ、わからなくなってしまう人もいるのです。 衣服をたんすから取り出す。 この時点では、衣服が必要で、また衣服が置いてある場所もわかっています。 それなのに、いざその服を身に着けようとすると、手足のまひなどはないにもかかわらず、首を通すところに腕を通してしまうなどして、いつまでたっても着ることができないのです。 このように、運動機能に問題がないのに、いつもの動作や行動などが目的通りに行えなくなることを「失行」といい、認知症の中核症状の1つとされています。
◆認知症の兆候 記憶障害、失行のほか、認知症の中核症状には、次のようなものがあります。 ・見当識障害……時間、場所など、自分の置かれている状況がわからなくなる ・理解・判断力の低下……物事を理解するのに時間がかかり、適切な判断が下せなくなる ・実行機能障害……計画的に物事を進められなかったり複数の動作を同時にこなせなかったりする ・失語……文字の読み書き、会話が困難になる ・失認……自分の体の状態やものの存在、自分とものとの位置関係などがわからなくなる これらの症状は、老化による脳の機能の低下では見られません。 老化による脳の機能の低下と、病気である認知症とは、はっきりと分けて考える必要があります。 ちょっとしたことが思い出せず、「ボケが激しくて、認知症気味なのかしら」と自虐的にいう方がよくいらっしゃいます。 それが冗談ならともかく、本当に心配であれば、もの忘れのタイプをチェックして、いたずらに怖がらないでください。 逆に、認知症が疑われる兆候があれば、できるだけ早く専門的な医療機関に相談するようにしましょう。 ※本稿は、『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)の一部を再編集したものです。
上村理絵