完全失業率と有効求人倍率 2つの数字の意味は?
総務省は、昨年12月の完全失業率を3.7%と発表しました。9月から11月まですっと4.0%でしたから、雇用情勢は回復傾向にあることがわかります。一方、厚生労働省が発表した12月の有効求人倍率は、前月比0.03ポイント上昇の1.03倍でした。 [グラフ付き]そもそも有効求人倍率って何? では、完全失業率と有効求人倍率は、どのように見るとよいのでしょうか?
景気が回復すると完全失業率は上がることも?
完全失業率は、総務省が全国から無作為に4万世帯10万人の満15歳以上の人を選び、「世帯調査票」に記入してもらい、その解答を集計して算出します。働く意志を持たず、家に閉じこもっている人は失業者には含まれません。また、定職に就けず、アルバイトで窮状をしのいでいる人は就労者とされます。 景気が回復してくると、「仕事を探してみようかな」と動き出す人が増えてくるので、完全失業率は上がる場合もあります。逆に景気が悪化すると、定職に就くことをあきらめてしまう人も増えるため、完全失業率は下がる場合もあります。ですから、短期的な数字だけ見て、「改善した、悪化した」と判断することはできません。また、景気が悪化しても企業はすぐに社員を解雇するわけではなく、景気がよくなってもすぐに人を採用するわけではありません。そのため、完全失業率は一般に景気の変動より3ヶ月から半年ほど遅れて、世相を反映します。
求職者「1」あたりの求人案件数=有効求人倍率
有効求人倍率とは、ハローワークで職探しをする人1人に対して、何件の求人案件があるかを示す数値です。完全失業率よりも景気の変動をダイレクトに反映する傾向があります。 有効求人倍率が0.5倍なら2人に1件しか求人がありません。リーマンショック後には、0.42倍ということもありました。1倍なら1人に1件、2倍なら1人に2件の求人があるということになります。昨年12月の1.03倍というのは1人に1件以上の求人案件があるということで、2007年9月以来6年3か月ぶりの高水準です。 失業率と有効求人倍率は、その両方を見ることで、より正確に雇用情勢を把握することができます。たとえば、有効求人倍率は改善しているのに完全失業率が高い状態が続く場合は、求職者は正社員での就職を求めているのに、ハローワークに出ている求人案件にはパートや契約社員が多いといったことも考えられます。 (広沢大之助・社会科編集者)