J1昇格を懸けたラスト1枠の戦い。千葉が挑む“5度目”の正直「より一層強いジェフを見せつける」
指揮官の采配に変化。コンバートやスタメン抜擢も奏功
攻守のハードワークのレベルを上げていくことに加え、小林監督の采配も変化していった。 以前は、勝つには「あと1点」という場面でパワープレーを仕掛けなかったり、2トップにしなかったりするなど、「何がなんでも勝つんだ」という勝利に対する貪欲さが感じられない采配もあった。だが、状況的に必要と考えれば、そういう強気の采配を見せるようになり、選手起用でも勝利を呼び込むようになった。 ディフェンスラインとの連係を考慮し、負傷以外でGKのスタメンを変えることは稀ではあるが、トレーニングを含めたパフォーマンスの出来を見て、第25節からGKのスタメンを新井章太から鈴木椋大に変更。鈴木椋はファインセーブで失点を阻止する姿を何度も見せた。 また、本来はボランチや攻撃的MFでプレーする髙橋壱晟は、昨シーズン多くの負傷が出たセンターバックでプレーしており、その守備能力と持ち前の攻撃センスを生かすため、第19節から髙橋にとっては初体験の右サイドバックで起用した。 逆に、右サイドバックが本職の米倉恒貴は負傷の影響で欠場が続いていたが、小林監督は米倉を右サイドハーフとしての交代出場という形で多く起用。過去に千葉でJ2降格を経験し、J1昇格プレーオフ敗退の悔しさも知る米倉は、「気持ちでボールを押し込むだけ」と貴重な決勝ゴールや同点ゴールを奪った。 また、得点力アップのためにシーズン途中でFC今治から獲得したドゥドゥがチームにもたらした効果も大きかった。Jリーグの多くのクラブでのプレー経験があり、早くに戦術を習得してチームにフィット。得点とアシストで勝利に貢献した。
ヴェルディは難敵だが「より一層強いジェフを見せつける」
チームは土壇場で決勝ゴールを奪う勝負強さも発揮し、第31節からクラブタイ記録となる7連勝を記録。 リーグ終盤戦、小林監督はファン、サポーターの後押しのパワーアップを願い、SNSなどで積極的に集客を呼びかけた。その思いに応えるべく、観戦から遠ざかったサポーターもいるため1万人超えがなかなか実現しなかったホームスタジアムのフクダ電子アリーナには、第36節から1万3000人を超える観客が集まるようになった。 アウェイのスタジアムにも多くの千葉サポーターが来場するなど、まさに“一体感”のある試合が続き、アウェイゲームの第41節・群馬戦(2-1)での逆転勝利で千葉はJ1昇格プレーオフ進出を確定。観客が1万5201人を記録した最終節・長崎戦は1-2の逆転負けで最終順位は6位となり、J1昇格プレーオフの初戦となる準決勝では第39節で2-0から2-3という痛恨の逆転負けを喫した3位・ヴェルディと11月26日に対戦する。 奇しくも第39節の試合後、PK失敗でハットトリックを逃したドゥドゥは「J1昇格プレーオフでヴェルディと対戦する可能性があるので、その時にはきっとより一層強いジェフを見せつけることができるのかなと思う」と語った。 小林監督は常に「自分たちはチャレンジャー」と話し、J1昇格プレーオフに向けて監督も選手たちも「自分たちには失うものがない。(決勝戦も含め)あと2試合勝つだけ」と異口同音に語った。 ヴェルディは難敵だが、勝つために攻守でやるべきことをピッチでしっかりと体現するだけ。もちろん、その先に見据えるのは、12月2日、J1昇格を懸けた決勝戦だ。 <了>
文=赤沼圭子