J1昇格を懸けたラスト1枠の戦い。千葉が挑む“5度目”の正直「より一層強いジェフを見せつける」
小林慶行監督の信念がブレなかった理由
J1昇格を目指すには程遠い順位に、小林監督や選手たちは強い危機感を抱いた。 初めて監督となった小林監督は当初、厳しく叱咤することで選手がやる気を失うことを危惧し、選手への指導のやり方や接し方に気をつけていた。それもあって全体トレーニングの雰囲気は厳しさがなかったわけではないが、和やかなムードが漂っていた。だが、現況のままでは強くならず、何かを変えなければチームは成長していかない。小林監督はまず自分を変えた。以前よりも厳しさを増した指導を心がけて自分の“熱”を伝え、トレーニングの雰囲気を変えていった。次節に向けたミーティングでの前の試合のフィードバックでは、例えば失点シーンではどの選手のプレーに問題があったか、当該選手に「あなたの責任だよね」とはっきりと伝えた。 変化は小林監督だけではなく選手にも生まれた。このままではJ1に上がることなどできない。その強い危機感から、今まで以上に精度や強度の高いプレーを心がけ、それを互いに求め合い、指摘し合ってトレーニングで励んだ。「当たり前のことを当たり前にやる」という中での「当たり前」のベースのレベルを上げていくことを選手たち自ら意識し、トレーニングで徹底。その取り組みによる積み重ねは、次第に試合でのプレー内容、結果に表われ、自信がついた選手は精神的タフさも高めていった。 チームキャプテンで守備陣のリーダーでもある鈴木大輔の統率によるラインコントロールで、全体をコンパクトにすることを重視し、攻守の切り替えのスピードを高めてシームレスに攻守を行う。攻撃も得意な得点パターンのサイド攻撃からのクロスという形に加え、選手の連動性の向上から中央に縦パスが入る回数が増え、ダイレクトパスを多用したゴール前中央の崩しの形も増えた。 チームは求める結果を出すために、開幕時は3-2-3-2だったフォーメーションを第7節から4バックに変更し、2トップを1トップに変えて4-2-3-1をメインにする変化はあった。だが、結果が出なくても、チームの戦い方がブレることはなかった。自ら性格を「頑固」と語る小林監督だが、ただ頑固なのではなく、やり続けて積み重ねていくことでチームがレベルアップし、J1昇格を達成できるはずだという信念があった。とはいえ、リーグ前半戦の戦績などから「自分だけの気持ちでいえば、もしかしたら折れたかな」と感じるほどの苦悩はあった。それでもブレなかったのは、自分を信じてトレーニングの準備をするコーチングスタッフの支えがあり、必死にトレーニングに取り組む選手たちがいたからだという。