センバツ高校野球 選手に温かい料理を 食で応援 東海大菅生・野球部OB、三島悠貴さん /東京
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場している東海大菅生の選手の胃袋を支えるのが、野球部OBで調理師の三島悠貴さん(38)だ。新型コロナウイルス禍で夢だったすし職人の道が断たれ、同校の食堂で働き始めた経歴を持つ。決して食生活が充実していなかった野球部時代を振り返り、「選手たちにはできたての料理を届けたい」と腕を振るっている。【加藤昌平】 ◇状況合わせ工夫も 「今日のメニューは何ですか?」。3月上旬、野球部の寮が隣接する東海大菅生中等部の校舎内にある学生食堂で、練習を終えた選手たちが配膳係のスタッフに声をかけた。「今日は牛丼だよ」と返答があると、選手の笑顔がはじけた。その様子を三島さんはうれしそうに見つめ、「食べに来るときはみんな元気。本当にお前ら野球やってきたのかっていうくらい」と笑った。 三島さんが同校の野球部員としてグラウンドを駆け回っていた約20年前、今の食堂はなく、寮も最寄り駅から電車で3駅ほど離れた青梅市内にあった。練習が終わると約1時間かけて寮に戻り、作り置きの冷めたごはんを食べる日々。食事にはあまり良い思い出がなかった。 高校卒業後、北海道の大学に進学し、不動産会社や郵便局の営業の仕事に就いた。母校が甲子園で4強入りした2017年夏、新しくできた食堂を紹介する新聞記事を読んだ。きれいに盛り付けられている料理の写真を見て、「今は見た目から食欲がそそられるような食事を作っているんだな」と感慨深かった。 三島さんはその後、調理師の免許を取り、夢だったすし職人の修行に入った。コロナ禍で店の営業がほぼできなくなり、将来を再び考えるようになったとき、あの新聞記事を思い出した。「野球部を食で応援できないか」。昨年2月に食堂の運営会社に入社し、同校の食堂勤務を希望した。願いはかない、今年1月から食堂専属として働いている。 今は料理長を含めて調理師3人の持ち回りで、野球部の朝食と夕食を担当する。練習で疲れた選手が少しでも食べやすいよう、味付けを少し薄めにするなど工夫している。体を大きくするため食べる量を増やす食事トレーニングの時には、喉を通りやすくするために米を軟らかく炊いたりもした。 「今年のチームは自主性が強くて一体感がある。食事をしているところを見ていると分かる。甲子園でもそんな良い所を出してほしい」。日本一を目指して奮闘する選手たちに三島さんはエールを送った。 〔多摩版〕