バレー「SVリーグ」が開幕2ヵ月。髙橋 藍たちが語る手応えと今後
現在は、会場を訪れる観客の8、9割が女性という印象だ。アイドルやミュージシャンのライブを楽しむ〝推し活〟にも近い。「チームやバレーが好きな人たちではない」と揶揄する声もあるが、女性は男性よりも購買力が高く、グッズ売り上げも好調だ。 コートサイドの席では、ウオームアップ中に強烈なスパイクが飛んでくるが、彼女たちは負けじとスマートフォンのカメラをかざし、〝推し〟の最高なショットを収めようとする。 たまにボールがスマホごと吹き飛ばすが、それを拾い上げ、再びカメラを向ける。座席付近に転がったボールを選手が拾いに来ると、それを返して夢心地の表情だ。 彼女たちがコートでの感動を写真とともにSNSに上げることで、その輪は確実に広がっている。 「男性ファンの獲得も」。リーグ関係者はそれを課題にしているが、不可能ではない。 男子バレーは、野球やサッカーを楽しんでいる男性ファン層を引きつけるだけの臨場感がある。2m前後の男たちが俊敏に動き、頭脳的な布陣でブロックを崩し、奇跡的なディグ(スパイクレシーブ)で拾い上げる。スピード、パワー、連係が交錯し、スペクタクル性は高い。 「自分は、『SVリーグを世界最高峰にできる』と思っています。海外の有力選手も集まるはずで、そうなると日本人選手がスタートから出にくくなると思いますが、全体のレベルを上げるためにも必要なことです」 髙橋 藍の発言だが、各国代表クラスの選手や実績のある外国人監督が数多くやって来て、競技性も高まっている。ジェイテクトのアメリカ代表トリー・デファルコはパリ五輪の銅メダリスト、サントリーのドミトリー・ムセルスキーはロンドン五輪ロシア代表の金メダリストで、身長218㎝の長身選手だ。 ブルテオンの日本代表リベロ、山本智大もレベル向上について話していた。 「過去と比べると、外国人選手も含めて、どのチームと対戦しても毎試合レベルは高いです。例えば(ウルフドッグス名古屋のオランダ代表オポジット)ニミル(・アブデルアジズ)選手は世界トップクラスのサーバーで、少しも気が抜けないですし、刺激的。『やらなきゃいけない』という気持ちが強くなっていますね」 一方、ブラジル代表で、SVリーグの最多得点を争う広島サンダーズのオポジット、フェリペ・ロケは野心的にこう語った。 「チームが優勝するため、アタック、ブロック、サーブという持ち味を出したいです。ただ、日本はディフェンス力がものすごく高い。ブロックも素晴らしく、〝ボールが落ちない〟難しさがあるから、そこでどう戦うかですね」 その切磋琢磨がレベルアップにつながるはずだ。 リーグ開幕2ヵ月、座席の8割以上が埋まっている会場も多く、中には満員のアリーナもあり、〝ハコ次第〟では伸びしろも見込める。2028年ロサンゼルス五輪に向けて、日本代表もティリ監督の新体制が始動し、さらに注目を浴びるだろう。まだ渦は大きくないが、「男子バレーに人気沸騰の予感あり」だ。 ★【『スポルティーバ バレーボール特集号』発売中】石川祐希、髙橋 藍ら人気選手のインタビュー掲載。特典付録は『ハイキュー!!』名言シーンのビジュアルブック! 取材・文/小宮良之 写真/アフロ