【玉田圭司×名良橋晃|元日本代表が語り合う高校サッカー】ファンタジスタは消えたのか? 話題のテーマを徹底討論で深掘りした“創造性の育成”。指導の鍵は「自然体」(番外編)
意図のある積極的なトライはめちゃくちゃ褒める
――ちなみに、影響を受けた本田裕一郎先生があまり指示しない監督だったんですか? 玉田 本田先生からは、あんまりサッカーの話をされなかったですね。練習もコーチが指導してくれていたので。 名良橋 でも、オーラだけでピリッと(笑)。 玉田 ですね。獣みたいな(笑)。 名良橋 僕の1個下の仲村浩二(現・尚志監督)も習志野出身で、「ピリッとする」と言っていました。みんなが思っているんだから、本田先生はやっぱりすごいなぁ。 玉田 そうなるとたぶん、選手の発想力が生まれますよね。 名良橋 自分でなんとかしなければいけない状況に置かれた時にですよね。 ――選手の創造性を大事にしたい一方で、監督としてはチームの勝利も必要になってくると、指導の際に難しさを感じませんか? 玉田 難しいですけど、僕は勝ちにこだわっても、勝つためだけに指導していないんです。プレミアでも勝つためだけが目的なら、もっと違う戦い方を採用していました。特に最初は後ろでボールをつないでロストして失点し、負けたり、引き分けた試合もあったので。そこで割り切ってボールを蹴れば、勝てたかもしれないですけど、サッカーを楽しんでこその勝敗だと僕は思っていて、チャレンジしたからこそ点を取れた、もしくはチャンスを作れたシーンだって絶対ある。サッカー観、指導論は人それぞれなので一概にどれが良いか分からないですけど、選手がトライしたうえでのミスに関して僕は絶対に怒らないです。逆に褒めるくらい。 名良橋 トライしないミスのほうが良くないですよね。 玉田 はい。消極的なミスには怒りますけど、意図のある積極的なトライというのは、僕は練習からでもめちゃくちゃ褒めます。 名良橋 じゃあ、あとは練習を見させていただければと。 玉田 見てくれるんですか? 名良橋 当たり前じゃないですか! 見て学びます! 玉田 そんなに大した練習やらないですよ。見て学ぶって(笑)。 名良橋 見学! 僕は字のごとく、見て学びます! ――◆――◆―― 練習を見学していた名良橋氏が思わず呟いた。 「みんな自然体ですよね」 確かにグラウンドには飾り気のない空気が流れていた。まるでサッカーを楽しむ少年たちが公園に集まっているかのような雰囲気なのに、要所で玉田監督がコーチングすると、肝の球際では日本一のバトルが繰り広げられる。高強度で良質なトレーニングのなかで、とりわけ攻撃陣はアイデア溢れるプレーを見せていたのも印象深い。 夕暮れに練習見学を終えてピッチをあとにする時、筆者はふと思った。 「面白かったなぁ。また見に来たいな」 もうすっかり、玉田監督率いる昌平に魅了されていた。本来あるべきサッカーの真髄に、改めて気づかせてもらったと感じている。 <了> 取材・文●志水麗鑑(フリーライター) PROFILE 玉田圭司(たまだ・けいじ)/80年4月11日生まれ、千葉県出身。高校時代は習志野高でプレーし、プロ入り後は柏や名古屋などで活躍した元日本代表FW。2006年のドイツ・ワールドカップではブラジル戦でゴールを決めた。2021年に現役を引退し、2023年から昌平でコーチを務め、2024年からは監督に就任。同年8月にはチームをインターハイ優勝に導いた。 名良橋晃(ならはし・あきら)/71年11月26日生まれ、千葉県出身。高校時代は千葉英和高でプレーし、プロ入り後は平塚(現湘南)や鹿島などで活躍した元日本代表の右SB。98年にはフランス・ワールドカップに出場した。現在はJSPORTSで放送されている『Foot!』で、高校年代の大会や選手を紹介する木曜日のコメンテーターを務めている。
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