「先延ばし癖のある部下」がみるみる変わっていく手法とは?人の感情や合理性を理解すれば指導も簡単になる
答えはB。損失フレーム表現は行動変容に効果的であり、さまざまな研究や自治体の活動で報告されている。脳科学を使った実験では、損をすると脳は痛みを感じる部位が反応する。つまり、損失は痛い感覚と同じなのだ。 ■超過勤務の削減と離職率低減につながったナッジ 行動特性Norms:人は組織の輪を乱すのを嫌う 人は集団から非難されたくない欲求をもっている。そのため多数派の意見に従ったり、自分の行動が他の人と違うと居心地の悪さを感じたりするのだ。これは不平等回避性と呼ばれ、自分と他者の利得に格差があることを嫌う特性を持つ。
熊本地域医療センターは、ノームの特性を活かしたナッジにより、超過勤務の削減と離職率の低減に成功している。病院では日勤と夜勤の勤務交代において、交代後も仕事をしてしまうことが超過勤務要因の1つであった。 そこで、攻守が入れ替わるアメリカンフットボールから着想を得た院長の発案により、看護師のスクラブ(ユニフォーム)を、誰が見ても違いがわかるように日勤は深い赤色、夜勤は深緑色の2色制に変更したのだ。 これにより、勤務交代後に残っていると緑の中に赤が存在し、規範から外れて残業している人が一目でわかるように。結果、交代時でも業務依頼が明確になり、新人は帰りやすくなった。医師も患者の体調確認や処置の指示を誰にしたらよいか迷わなくなったそうだ。当然、残業は激減し、離職率も低下するという成果につながった。
行動特性Commitments:仕事を先延ばししていない? Commitomentsとは約束や確約を意味し、先延ばししないよう将来の制約を現段階で設けておくことを示す。人は公の場で約束したことなどは整合性を保とうとするため、約束を実行する傾向にある。この特性を利用すれば、現在バイアスからくる先延ばし行動を防ぐことができる。 現在バイアスは遠い未来に得られる得よりも、現在の利益に大きな価値を見出す特徴を持つ。人は計画をするものの、いざとなると直近の喜びや楽しみを優先するため、計画を先延ばししてしまうのだ。喫煙やダイエット、資格試験の勉強などでもありがちである。