「先延ばし癖のある部下」がみるみる変わっていく手法とは?人の感情や合理性を理解すれば指導も簡単になる
利用可能性ヒューリスティックは時に間違えた判断を導いてしまう。例えば、ニュースやSNSで取り上げられることは思いつきやすく、よく起こる事だと思い込む。 また、成功する事例ばかり見ていると、根拠なく上手くいくと思い込んでしまう。この場合、成功しかイメージできず、リスクが頭から抜けてしまう。このリスク軽視は決定的なミスを引き起こす。 スタートアップや新規事業でも、自分たちは順調にいくと錯覚することがある。特に伝統があり、長年好調な業績を重ねている企業は楽観的になり、リスクを軽視しやすいことが報告されている。
■楽観的主義を抑える有効な手段 部下やチームがリスクを軽視しているとき、どんなアドバイスが必要だろうか? ダニエル・カーネマンは楽観的主義を抑える手段として「死亡前死因分析」が効果的だと『ファスト&スロー(下)』で示している。 では、カーネマン式の取り入れ方を説明しよう。プロジェクトが公表される前にメンバーを集めて欲しい。そして「1年後、このプロジェクトはローンチするが大失敗に終わる。さて、何が要因で失敗するのか? その経過をイメージしてまとめよう」と、メンバーに伝えて話し合うのだ。
メンバーから「為替や環境が激変してプロジェクトが成立しなくなった」「土地が買収できなかった」といった要因が上がったとしよう。この失敗のすべてについて回避策や発生時の影響を軽減するプランを全員で考え、プロジェクトの計画に盛り込むのだ。 行動特性Incentives:損をしたくない心 人々に努力を促すインセンティブはお金とは限らない。人は損失を強く回避しようとする行動特性を持つ。カーネマンとトベルスキーが提唱したプロスペクト理論は、状況に応じて人が確率を歪んで認識することを導きだしたものだ。この理論には3つの認知的特徴があり、その1つに損失回避性が含まれる。
投資家は往々にして収益が出ている時、利益確定に動く。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとして大きな投資判断を行う。これは損失回避性が働いているためだ。 では、この特性を考慮して健康診断で社員の生活習慣病を防ぐためには、どちらの表現が効果的だろうか? A:1日の食事を2000キロカロリーにすれば、あなたは生活習慣病になる可能性が低くなり、健康状態は良くなります【利得フレーム】 B:1日の食事を2000キロカロリーにしなければ、あなたは生活習慣病になる可能性が高くなり、健康状態は悪くなります【損失フレーム】