「先延ばし癖のある部下」がみるみる変わっていく手法とは?人の感情や合理性を理解すれば指導も簡単になる
人は感情や経験によって非合理的な選択をしてしまう。早く取り組まないといけない課題があるのに、目先の楽しさを優先して先送りしてしまう経験は誰にでもあるはずだ。この先延ばし行動の「くせ」を理解し、職場の部下やメンバーをよりよい行動(選択)に誘導するにはどうしたらいいのか。 『リーダーのためのコミュニケーションマネジメント』の著者で、2000件以上の企業研修でマネジメントや人材育成の課題解決を支援した実績を持つ杉本ゆかり氏が解説する。 【この記事の他の画像を見る】
■非合理的な行動を修正できる「ナッジ」 経済学では、人間は「合理的経済人」とよばれ、強い自制心をもちリスクを正しく考え、最善の行動をとることができると考えられている。しかし、現実には人間は合理的とは言い難い行動をとってしまうものだ。この非合理的な行動を修正できるのがナッジだ。ナッジは「肘でそっと突く」という意味であり、ノーベル経済学賞受賞のリチャード・セイラーが唱えた理論である。 ナッジのフレームワークであるMINDSPACEは、「Messengers(伝える人)」「Incentives(誘因)」「Norms(規範)」「Defaults(初期設定)」「Salience(顕著性)」「Priming(先行刺激)」「Affect(感情)」「Commitments(約束)」「Ego(自我)」の頭文字からとったものだ。
これらは人間の非合理性を表したものであり、これらの特性は目標達成のために行動を変えることに活用することができる(下図)。本稿ではこのうち4つを例に、部下やメンバーの行動変容を促す方法を紹介する。 行動特性Messengers:リスクを読み違えてない? Messengersとは、誰が情報を伝えるかによって判断に影響が出る行動特性を示す。人は判断するとき、思い浮かぶ記憶で対応する。そのため、テレビやSNSでインフルエンサーや信頼する人が発信した、入手しやすい情報を優先して判断してしまう。この特性を利用可能性ヒューリスティックと呼ぶ。