【ジロ・デ・イタリア2024 レースレポート:第9ステージ】ナポリにはサスペンスがよく似合う。休息日前夜の荒れたフィニッシュで、コーイが初出場1勝目。「即興的に動いた。ちょっとしたギャンブルでもあった」
代わってジョナタン・ナルバエスが最前列へと踊り出た。今大会では唯一、ポガチャルとの直接対決を制した初日覇者の奇襲に、プロトンは大混乱に陥った。複数の脚自慢が流れに続こうとした。重量級スプリンターを守るために、先頭で適度なリズムを刻んでいたはずのトレックは、一瞬で統率力を失った。ライバルの苦痛を尻目に、グローブスは嬉々として集団前方でペダルを回した。
たった5秒の虎の子を手に、残り6km、ナルバエスは下りに転じた。トレックは大急ぎで隊列を編成し直し、ヴィスマ・リースアバイクはコーイを前線へと連れ戻した。1年前のナポリではラスト300mまで逃げ続けたアレッサンドロ・デマルキも、今年はカレブ・ユアンのために率先して前を追った。しかし港町の裏道は、舗装状態がひどく悪かった。ナルバエスも驚異的な粘りを披露した。ラスト1kmのロータリーを抜け出した時点で、背後のプロトンとの差は、むしろ12秒に拡大していた。アルペシンは「エネルギーを浪費しすぎた」(byグローブス)せいでもはやアシストを残しておらず、コーイもラスト1kmで完全に一人になった。いまや追走可能なスプリンター隊列はトレックのみだが、あとわずかの距離が縮まらない。
そんなぎりぎりの均衡を崩し、ナルバエスにとどめを刺したのは、まさかのポガチャルだった。フアン・モラノを背後に引き連れて、突如として、先頭へと競り上った。猛烈に直線路を駆け上がると、初日マリア・ローザの野望を横取りしたライバルを、一気に射程圏内へ捕らえた。
「だってモラノは友であり、チームメートであり、スプリンターなんだ。難しくてテクニカルなコースだったから、僕に彼の発射台を務められると分かっていた。それに第1週目はずっと僕のために働いてくれたんだから、今日は僕が、彼のために仕事をしたかった」(ポガチャル)
残り150m、ミランががむしゃらにスプリントを切ったのと同時に、生き残ったすべてのスプリンターがラインへと突進した。もがくナルバエスは、ラスト25m、とうとう前から引きずり下ろされた。そのミランもまた、あとほんの少しが足りなかった。 「去年のナポリと同じく、また2位だった。アタックが次々と起こるだろうことは予測済みだったけれど、スプリントの瞬間、猛攻に耐えてきた影響を脚に感じた。チームメイトたちが心血注いで働いてくれたからこそ、勝てなかったことにがっかりしている」(ミラン)
【関連記事】
- 【速報 ジロ・デ・イタリア2024】グランツール初出場のオラフ・コーイがGT初区間優勝/第9ステージ
- 【ジロ・デ・イタリア2024 レースレポート:第8ステージ】カニバルか、ノーギフトか。ポガチャルが2日連続勝利で、8ステージを終えて3勝目。「きっと他の選手たちはうんざりしてるだろう。でも僕は自分のチームのために走っている」
- 【速報 ジロ・デ・イタリア2024】初出場ポガチャルが1週目で早くも区間3勝目/第8ステージ
- 【ジロ・デ・イタリア2024 レースレポート:第7ステージ】ポガチャルが登坂タイムトライアルで完勝、7日目にしてジロを完全制圧か。「ポジティブな意味で、今日の自分の走りには少し驚いている」
- 【速報 ジロ・デ・イタリア2024】上りだけで1分4秒稼いだポガチャルが区間2勝目/第7ステージ