【ジロ・デ・イタリア2024 レースレポート:第9ステージ】ナポリにはサスペンスがよく似合う。休息日前夜の荒れたフィニッシュで、コーイが初出場1勝目。「即興的に動いた。ちょっとしたギャンブルでもあった」
そこから道は起伏を帯び始める。プロトン内には緊迫感が充満していく。スプリンターチームに混ざって、総合系チームも、難解な最終盤に向けて隊列を組み上げた。それでも残り36km地点の4級山岳では、上りでも下りでも、あくまでアルペシン列車が主導権を握り続けた。
クレイジーなバトルへの引き金を引いたのは、ジュリアン・アラフィリップだった。ラスト27km、小さいけれど、勾配のとびきり厳しい坂道を利用して、名うてのパンチャーは飛び出した!
「アタックする計画はなかった。でも上りで好位置につけていたし、集団がひどくナーバスになっているのに気がついて、なにかしでかしてやろうと考えた」(アラフィリップ)
ここでもアルペシンが、ニコラ・コンチを刺客としてすばやく前に送り出した。疲れ果てたポルティ2人組を早々に回収し、さらに2選手が合流してきたが、アラフィリップ率いる6人の先頭グループは、つまり半分が戦力として機能しなかった。アルペシンに代わってトレックが6人で引っ張るメイン集団から、思うように差を奪うことなどできるはずもない。
3日前には逃げた挙句に2位で泣き、24時間前には逃げをUAEチームエミレーツに握りつぶされたアラフィリップは、なんとか起死回生を試みた。幸いだったのは、一足遅れて、エウェン・コステューが追いついてきたこと。残り21kmで元世界王者は改めて加速を切ると、人生初のグランツールを戦う21歳を引き連れて、さらなる逃走劇を繰り広げた。6人の時は15秒ほどしか得られなかったリードを、2人では、30秒にまで拡大した。細く曲がりくねった道で、フレンチコンビは夢中で先を急いだ。
「ジュリアンのような偉大な選手と時を分かち合えたことは、僕にとって素晴らしい経験だった。全力で先頭交代を繰り返したし、ジュリアンからたくさん励ましの声をかけてもらえた。最高の喜びだった」(コステュー)
抵抗は長くは続かなかった。ラスト10kmでコステューは力尽きた。一時は4秒差にまで詰められた差を、一人になったアラフィリップは、再び13秒差にまでこじ開けた。しかしラスト8km、プロトンから新たな弾丸が発射されると、奮闘にはあえなく終止符が打たれた。
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