稲盛和夫さん「胃がんがわかっても平常心」の強さ 30年間にわたり彼を見てきた参謀のノートより
しかし、いつまでもそれを引きずって心が不安定では、判断を誤ってしまう。だから、できるだけ早く平常心に戻るように努め、心が穏やかになったときに判断をしなければならないと教えています。 ■間違った判断はすぐに修正する ただ、自分の心がどのような状況にあるのかは、自分でもすぐにはわからないものです。それを知るために必要なのが、「反省ある毎日を送る」ことだと稲盛さんは語っています。 稲盛さん自身、毎朝、洗面をする際に、前日の自分を振り返り、反省することを習慣としていました。
そして、平常心を失い、何か人間としておかしな言動をしていたことに気が付くと「神様ごめんなさい」と声を出して謝っていたそうです。その結果、「たくさん間違った判断をしてきたが、すぐに修正してきた」とも率直に話していました。 また、こんな言葉も残しています。 「人間は人の心は見ようとするが、自分の心は見ようとしない。自分の心を一皮むけば、低次元のくだらないことを思い描いている。それを反省し、理性で戒めなければならない」
政治家がよく口にするような表面的な反省ではなく、心の奥底に何があるのかを確認したうえでの、心からの反省でなければ意味はないということです。それに加えて、「感性的な悩みをしない」ことも心を落ち着かせ、平常心を保つためには大切だと教えています。 「心の悩みをくよくよといつまでも持ち続けないことが大事です。現世では頭を悩ますようなことはいくらでも起きてきます。そんなことにとらわれるより毎日を明るく、前向きに一生懸命生きることのほうが大切なのです」「そうすれば必ず運命は開かれていきます」と稲盛さんは諭しているのです。
「ミスをして迷惑をかけてしまった」「親しい友人とけんかしてしまった」「約束を破られた」というようなことは日常茶飯に起こります。それで気落ちしてくよくよしても、何も解決しません。むしろ、それで悩み続けていると健康を害してしまうかもしれません。 反省すべきは反省し、「覆水盆に返らず」というように、終わったことは仕方ないと忘れて、すぐに明るく前向きに一生懸命生きるべきなのです。 このように心がけることで平常心が保てる。つまり、「一生懸命生きて安心立命できる」のだと稲盛さんは教えているのです。