NZ銃乱射テロ 日本は人ごとなのか?
ニュージーランドで3月15日に起きたテロ事件は、死者の数や銃乱射の模様をライブ配信した手口だけではなく、それまで目立ったテロ事件がなく平和なイメージの強かった国での発生という意味でも衝撃的でした。元公安調査庁東北公安調査局長で日本大学危機管理学部教授の安部川元伸氏に寄稿してもらいました。 【写真】高まる「ホームグロウン・テロ」の脅威 対策には何が必要か?
◇ 2つの大きな島と大小多数の島々からなるニュージーランドは、国土の形状が何となく日本に似ていて、日本人にも親しみのある風光明媚で美しい国です。そのニュージーランド第2の都市、クライストチャーチの2つのイスラム教モスク(礼拝所)で目を背けたくなるような凄惨なテロ事件が発生しました。犯人は28歳のオーストラリア人で、「白人至上主義者」と名乗り、金曜礼拝が行われていたモスク内で銃を乱射、50人を殺害し、負傷者も50人に及びました。動機として、犯人はイスラム教徒及び移民への憎悪を挙げていました。さらに、このテロ事件をめぐってはいくつかの特徴がみられます。
「銃社会の国」ニュージーランド
ニュージーランドでは、これまで世界の注目を集めるような事件はほとんど発生していませんでした。しかし、今回の銃乱射事件を受け、犯人がどんなルートで銃を入手したかを調べると、銃所持のライセンスを保有し、時々シューティング・レンジで射撃の練習を楽しんでいたとのことでした。 ニュージーランドは英連邦の一員で、1800年代に英国から白人移民が次々と送り込まれ、やがて英国の支配下に入りました。そんな影響もあってか、野山に棲息する野生動物をハンティングするスポーツが盛んで、国民が所有する銃の数も世界の平均を上回っているようです。しかし、ハンティングに使われるはずの銃が、罪のない市民に向けられ、50人もの命を奪うことになりました。事件の翌日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は「このようなテロを防止するためには銃の売買、所持を全面禁止する必要がある」と述べ、銃所持の規制に乗り出す構えでいます。