NZ銃乱射テロ 日本は人ごとなのか?
銃の保有に関する統計は種々あり、それぞれ微妙に数値は異なっていますが、「Worldatlas」社の統計では「表1」のようになっています。これをみると、米国では人間の数よりも銃の数の方が多くなっています(1人で複数丁保有している人が多く存在するため)。今回事件が発生したニュージーランドは21位で、国民100人当たりで22.6丁、すなわち国民4~5人で1丁を保有している計算になります。世界では175か国以上が一般市民の銃保有を認めているといわれるので、ニュージーランドがその中で21位というのはかなり高い水準にあると言えます。
白人至上主義者で犯行をライブ配信
逮捕された犯人は、自分はオーストラリア人で単独で犯行を行ったこと、イスラム教徒と移民に対して強い憎悪を抱いていたこと、白人至上主義を信奉していること、犯行に向かう途中から殺戮の状況までカメラで動画を撮り、リアルタイムでフェースブックに流し続けたことなどを供述したといわれています。ただ具体的な動機などは現時点でも詳しくは分かっていません。 白人至上主義とは「白人こそが最も優れた人種であり、有色人種は劣っている」との人種差別思想を掲げ、時には暴力や殺人まで引き起こす危険思想とみられていますが、最近はイスラム過激派によるテロが頻発しているために、警察や情報機関なども極右への警戒心が薄れがちになっていたといわれます。実際、今回の事件を引き起こした犯人は、過去に自己の思想を堂々とSNS上に投稿していたにもかかわらず、事件が起きるまで危険分子(テロリスト)のリストに載せられていませんでした。 そのため、地元の警察や情報機関は、的確な事前情報を国民に提供できなかったことを強く非難されました。しかし、犯人がオーストラリアでフィットネス・クラブに勤務していた頃の元上司は「彼は過激思想や暴力的な性格の片鱗も見せたことがなかった」とメディアのインタビューで語っています。 白人至上主義の組織としては、米国の「クー・クラックス・クラン」(KKK)やドイツの「ネオナチ」などが有名ですが、最もわれわれの記憶に新しい事件は、2011年7月にノルウェーで発生した極右の犯人による連続テロ事件でしょう。オスロの政府庁舎爆破とウトヤ島での銃乱射事件を合わせた死者は計77人にも及びました。 ニュージーランド事件の犯人も、根本的に同じ思想を共有するノルウェー事件の犯人に大いに触発され、イスラム教徒や移民らに対するテロ攻撃の機会をうかがっていたことも考えられます。犯人がかつてメディアに投稿した「大いなる転換」と題する欧州の反移民論者に訴えた文章がありますが、その中で犯人は「2017年に欧州を訪問した後にイスラム攻撃の計画を練り始めた……」と自ら告白しています。