マインドフルネスを体験する宿 鎌倉で東京で、茶道・座禅・たき火で集中
連載《とっておきの旅》
「マインドフルネス」とは、目の前のことだけに意識を向け、集中すること。日常に取り入れることで脳が休まり、集中力や判断力が高まると言われている。近年は米のグーグルやヤフーをはじめとする数多くのグローバル企業が社内研修に採用していることでも知られ、日本でも注目度が高まっている。海外で火がついたトレンドではあるが、実は、茶道や華道、剣道といった日本の伝統的な「道」はすべてマインドフルネスの精神に基づいており、古くから日本人にとってなじみの深いものだ。今回は、脳が一日中フル回転している現代の多忙なビジネスパーソンにこそ必要な、日本ならではのマインドフルネスな体験ができる東京近郊の滞在先を2軒紹介しよう。 【写真はこちら】2つの宿の様子をもっと見る!
■1日1組限定、「知足」を体感できるモダン旅館
神奈川県鎌倉市、由比ガ浜を目の前に望む「Modern Ryokan kishi-ke(岸家)」は、禅宗の教えの1つである「知足(足るを知ること)」をテーマに、茶道や香道など、さまざまな日本文化を体験できる宿だ。1日1組限定、1棟貸しの完全にプライベートな空間で、オーシャンビューと日本庭園を楽しみながら、心をゆったりと落ち着かせることができる。 オーナーの岸信之氏は、岡山藩主池田家に仕えた武家の岸家の16代当主。幼い頃より祖父から「足るを知ること」「世の役に立つこと」などを教えられながら育った。いまでも心に残っているのが、商社に勤務していた30代の頃、90歳を超える祖父からたびたび「お茶でも飲んでいけ」と声をかけられ、ひたすら静かに玉露と茶菓子に集中したひとときだと言う。 「内心『こっちは忙しいのに』と思いながらも、断るわけにもいかず、渋々つき合っていました。ところがあるとき、どんなに頭が仕事でいっぱいでも、祖父が丁寧にいれてくれたお茶に向き合う15分の時間を挟むと、その後の集中力が増すことに気がついたんです。慌ただしい日々のなかで曇っていた自分の視界がクリアになるような感覚でした」(岸氏)