この夏、出会った「3つ星」のイノベーティヴな冷たいラーメン
「饗 くろ㐂」のサイケデリックなほどカラフルな「冷やし担々鶏そば」
浅草橋の「饗 くろ㐂」でも、夏ならではの冷たいラーメンがある。 この夏、久しぶりに出かけると、券売機の品書きになかったので、ご主人の黒木さんに伺うと、「すいません、気まぐれで色々やってます」とのこと。この日は、「つけ麺」をいただいたが、改めて出かけると、「冷やし担々鶏そば」があった。
目の前で黒木さんが盛り付けをするところを見ていると、品名を超える盛りだくさんの内容。目の前に現れたどんぶりは実にサイケデリックなほどにカラフルで、味が想像できなかった。ところが、トマトの酸味、辣油の辛み、胡麻の風味、鶏肉の味わい、そして、中から顔を出したのは小松菜の練り込み麺で、すべてがバランスよくハーモニーを奏でている。どんぶりの中はカオス状態のメルティングポットだが、味わいは滋味にして佳味だった!
「五稜郭」の「冷やし塩ラーメン」はスパイシーでエキゾティック
さらにもう1軒、荻窪「五稜郭」の「冷やし塩ラーメン」。これまた盛りだくさんの具がどんぶり一面に並んでいる。トマト、パプリカ、チャーシューはじめレモンまで、スパイシーでエキゾティックな香りを楽しませてくれるラーメンだった。精妙な塩味のスープが陰の引き立て役である。 以上が、この夏、わたしが出会った「3つ星」のイノベーティヴな冷たいラーメン。
クラシックのスタンダードな冷たいラーメンなら、末広町「田中そば店」の「冷やかけ中華そば」、松庵「中華料理 八龍」の「冷やしラーメン」は典型的な元祖山形の冷やしラーメンである。
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
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文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)