この夏、出会った「3つ星」のイノベーティヴな冷たいラーメン
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
真夏のラーメン店にはそれぞれ創意工夫を凝らしたメニューが
今年は7月から「酷暑」がはじまり、8月になってもそれが一向に収まらない日が続いた。昼、家にいる時はそうめん。2分で茹で上がるそうめんを、刻んだ茗荷を入れたつゆにつけていただくと、口の中に涼風が吹く。そば屋でも、茗荷と大葉を刻んだぶっかけそばなどが品書きに並んでいて、涼しげである。 ところが、ラーメン専門店にとっては、まさしく受難の季節である。食べる方も、いくら店内の空調が効いていると言っても、熱いラーメンには気持ちが動かない。また、涼しくなったら食べればいいと、呑気なものである。しかし、お店側はそうはいかない。なんとしてでも、足を向けてもらおうと、ラーメンに創意工夫を凝らして、客を呼ぼうとする。
そうそう、思い出したが、一昨年の夏、大阪の「カドヤ食堂」へ出かけた時、並んだ店の前に日陰はなく、ラーメンを食べたいが、それより一刻も早く店の中に入りたい気持ちの方が強かった。ようやくのこと席に着くと、女将さんらしき人が紙ナプキンを手渡してくれた。これが冷凍庫から取り出したばかりの紙ナプキンで、冷たいの、なんの! ラーメンを食べる前に、感動してしまった!
酸味がとても心地よい「麵や七彩」の冷たいラーメン
さて、今年の夏に出会った、いくつかの素敵な冷たいラーメンをご紹介しよう。 まずは、八丁堀の「麵や七彩」の夏季限定の冷たいラーメン。この店、客が来店してから麺を打つことで知られているが、「冷やし中華」はタレにトマトを使っていて、酸味がとても心地よいラーメン。一緒に出かけた仲間は「青唐辛子の冷やし麺」を注文したが、青唐辛子にパクチーでエスニック風味と言っていた。
ランチタイム限定の「冷がけ中華そば」もスープに大根おろしのしぼり汁を加えてあり、さっぱり感がある冷たいラーメンだった。言い忘れたが、麺は打ち立てならではで、小麦の味わいが素晴らしい。 この店が恒例にしている「だだちゃ豆の冷やし麺」、毎年行列必至だそうで、今年は日程が合わず、来年チャレンジしようと思う。