『光る君へ』中宮彰子が自らを「若紫」に重ねたようにまひろが「空蝉」、あの一夜が「夕顔」などモチーフとなる『源氏物語』。では<物語のラスボス>あの生霊は…
◆六条御息所の影がないのは少し寂しい 光源氏は、その前の段落で、ひたすらに彼を信じる夕顔の無邪気さと、自尊心の高い六条御息所を比べて色々思っています。 「夕顔」帖の末尾でこの物怪は、「荒廃した家などに住む妖怪が、美しい源氏に恋をしたがために、愛人を取り殺したのである」と光源氏に理解されていますが、六条御息所と関係付けて、六条御息所の生霊と理解されることも多いのです。 しかしながら『光る君へ』では、安倍晴明は活躍するのに、怨霊や生霊は迷信を信じる人たちの心の中にしか出てきません(生霊の祟りは、確かまひろの“仮病”として一度出てきましたが)。 それもあって、六条御息所のモデルはドラマの中には出てこないのでしょう。あえて言うなら、道長の次妻・源明子の怨念と嫉妬がそれにあたるのでしょうか。 著者の感想としては、「夕顔」帖の断片が取り上げられてはいるものの、この後も含めて、『源氏物語』のラスボスとも言える、六条御息所の影が『光る君へ』の中で見られそうにないのは、少し寂しく感じてもいます。
榎村寛之
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