「みんなで寄ってたかって居心地を悪くしている」のが今の日本…東京大学名誉教授が語る「頭でっかち」の盲点《養老孟司さんインタビュー》
約束をせず、気が向いたらする
僕が好きなフランスの哲学者・モンテーニュに、「どんなに高い玉座に座るにしても、座っているのは自分の尻の上だ」という言葉があります。 暖房もエアコンもあり、社会がどんなに居心地が良くなったとしても、座っているのは自分の尻の上なんです。だから、自分の居心地の良さが基本であり、問題は玉座の高さではないんです。現代人は錯覚して「玉座が高いほど気持ちがいいんだろう」と思い込んでしまっている。 僕には習慣がまったくないですね。食事も、僕じゃなくて女房が決めるから。「ご飯ですよ」と呼ばれるだけです。何時に何をするなんて、まったく決めていません。だって、天気が変わるじゃないですか。天気が良ければ気持ちがいいから散歩に行きたくなるし、縁側に出たりしています。気が向いたら虫取りに出かけたりもします。 ただ、退院後はタバコを吸っていません。家族がうるさいので。僕はコーヒーも好きですが、カフェインがどうとか、別にいいじゃないですか。自分の居心地の良さに従うことです。社会全体がそれを当然にするようになれば、みんながハッピーになります。頭でっかちでは、疲れますよ。 「週刊現代」2024年12月28・2025年1月4日号より ……・・ 【もっと読む】「日本の居心地の悪さ」はどこから来るのか?...養老孟司が戦後「政治的・社会的なことは一切信用しないほうがよい」と感じてきた《日本のひずみ》について語った
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