バイデン米大統領の“最後っ屁”、日本製鉄にUSスチール買収阻止命令[新聞ウォッチ]
ひと昔前の正月三が日の新聞は、ご祝儀の観測記事を含めた“特ダネ”が紙面を飾ったものだったが、ここ数年はお屠蘇気分もすっ飛ぶようなスクープ記事にお目にかかったという記憶がない。 ところが、今年は新年早々に米国のバイデン大統領が、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画への禁止命令を発表したことで、各紙の4日付け朝刊は1面トップで「USスチール買収禁止、米大統領が命令」などと取り上げていた。 それによると、バイデン氏は日鉄とUSスチールに対し、原則30日以内に「買収計画を完全かつ永久に放棄するために必要な全ての措置」を講じるよう命令。「国内で所有・運営される強固な鉄鋼産業は、国家安全保障に不可欠であり、サプライチェーン(供給網)にとっても極めて重要だ」と説明したという。 ただ、日鉄とUSスチールも共同声明を発表し、「バイデン大統領が禁止命令を決定したことに失望している。自身の政治的な思惑のために、米国鉄鋼労働者の未来を犠牲にすることにほかならない」と反発。「法的権利を守るためのあらゆる措置を講じていく」と表明した。 翌5日の各紙も「日鉄、米政府を提訴へ」(朝日)や「日鉄、米提訴で打開狙う」(日経)などと1面トップで報じたほか、総合面などに解説記事、さらに社説のテーマにも「日米関係に禍根残す買収阻止」(読売)や「米大統領の判断は疑問だ」(産経)と解説。 このうち、日経は「USスチール買収阻止は不当な介入だ」(日経)とのタイトルで「日鉄による技術移転や投資が米国にどんな恩恵があるのか。株主や政府、労組だけでなく、もっと広く米国民の理解を得る必要がある。経営トップが顔の見える形で丁寧に説明してもらいたい」。 「鉄鋼大国となった中国への対抗策という点でも日米に意義あるM&A(合併・買収)だ。米政権は冷静に再考すべきではないか」などと強く非難している。 日鉄は海外戦略の再考を迫られることになるほか、日本企業にとっても対米投資に何らかの影響が出る可能性もあり、今後の日米関係に暗い影を落としかねないきな臭さも感じられるだけに、2025年は新年早々、世界経済の行方を案じる波乱の幕開けとなったようだ。 2025年1月6日付 ●マンハッタン渋滞税開始、駅改修、EVバス導入費に (読売・2面) ●日本の道路の起点日本橋、青空を取り戻せるか (毎日・17面) ●韓国機事故究明に時間、発生1週間焦点は車輪不作動 (産経・23面) ●従業員と年収格差66倍、役員報酬国際化で伸び、上位100社調査 (東京・1面) ●日鉄の買収阻止「残念」「経済安保の観点で必要」自民・木原氏(日経・2面) ●月曜経済観測、三菱自動車社長・加藤隆雄氏、タイ、家計債務が重荷に (日経・3面) ●米見本市CES4500社出展へ、ITや車、AIで機軸、トヨタ次世代都市アピール (日経・10面) ●「SHINJUKU」再起動、京王、駅西側に旗艦ホテル (日経・11面) ●日本車襲う中国EV、タイで遠のくエンジン音(日経・13面)
レスポンス 福田俊之