民間宇宙ステーション移行で「低軌道での有人活動を途切れさせない」–米上院がNASAに求める
2024年末に米上院に提出された米航空宇宙局(NASA)移行認可法案では、民間宇宙ステーションの開発促進や科学プログラムのコスト超過への対応が指示されている。 2024年版のNASA移行認可法案は、2025会計年度のNASA予算として254.78億ドル(約4兆円)を承認する内容となっている。NASAが要求した253億8400万ドルよりも高い。 海外メディアのSpaceNewsによると、「この超党派の法案は、地球軌道から月、そして火星に至るまで、NASAのリーダーシップを確かなものにするための野心的な道筋を示すものだ」と米連邦議会 商業委員会で委員長を務める上院議員のMaria Cantwell氏(インディアナ州、民主党)は述べている。 法案では、2030年までに国際宇宙ステーション(ISS)からISSの後継となる民間宇宙ステーションへの移行計画に関するもので、NASAに対して、この移行で地球低軌道(LEO)での有人活動が途切れないことを求めている。民間宇宙ステーション開発を加速するため、「商用地球低軌道開発計画」(Commercial Low earth orbit Development:CLD)で少なくとも2社を選定するように指示している。 CLDのパートナーとしては現在、AxiomやBlue Origin、Starlab Spaceが選ばれている。CLDでは、2026年半ばにも2回目の選考が予定されており、NASAは1社以上を選ぶとされている。 科学ミッションについては「未成熟で信頼性の低い」コスト見積もりが、ポートフォリオの課題となっていると指摘。特に、火星の試料(サンプル)を地球に回収する(サンプルリターン)計画「Mars Sample Returen(MSR)」の費用増大と遅延について「現実的なコストとスケジュール見積もり」による新たな実施計画を法案成立後90日以内に提出するようにNASAに指示している。 SpaceNewsによると、今回の法案は今のところ無意味なものになるという。現議会の最終日に提出された、この法案は、2025年3月中旬までの政府予算を確保するための新たな継続決議案が2024年12月20日に可決された後、閉会前の上院で取り上げられることはなかった。仮に可決されたとしても、下院は2024年9月にNASA承認法案を可決しており、この法案にはほとんど関心を示していなかった。 しかし、この法案は、2025年1月に召集される新議会で上院が関心を示す分野となるかもしれないとSpaceNewsは指摘する。共和党が支配する上院で、今回の法案を提出したCantwell氏と上院議員のTed Cruz氏(テキサス州、共和党)は2025年も商業委員会のリーダーを務める。
塚本直樹