元関脇・豊ノ島さんタレント転身も“稽古不足”痛感の日々「素のほうが面白いねって言われる」【あの人は今】
【あの人は今こうしている】 豊ノ島さん (元幕内力士/41歳) ◇ ◇ ◇ 【写真】貴景勝は“轢かれたヒキガエル”な負け方が横綱昇進の足かせ…突き押し専門と大型化の弊害 力士としては小柄ながらも巧みな差し身を武器に、幕内在位71場所、三賞10回、東関脇まで上り詰めた豊ノ島さん。2020年4月に18年にわたる現役を引退。今、どうしているか。 「相撲界を盛り上げたいという気持ちは、いまもまったく変わりません。ただ、大相撲の素晴らしさを外から広く発信していきたいと思ったんです」 引退後は、部屋付きの親方として後進の指導にあたっていたが、昨年1月に退職し、タレントに転身。あえて、タレント活動という未知の世界へと飛び込む決断をした豊ノ島さん。“憧れの人”からの一言が背中を押してくれたという。 「断髪式にも来てくださったダウンタウンの浜田雅功さんとは、現役時代のときに『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)に出演したことをきっかけに交流が始まったのですが、引退する少し前に、番組でご一緒させていただいた時、浜田さんから『引退したあとは、どないするんや?』と声をかけていただいたんです。『相撲界に残って、親方としてやっていくつもりです』と答えたら、浜田さんは『こっちの世界に来ても面白いと思うけどな。案外、いけると思うで』と言ってくださった。わたしは、小さいころからテレビっ子で、特にダウンタウンの番組が大好きだったんです。だから、浜田さんは、わたしにとって雲の上のような存在。そんな浜田さんから言われた言葉は、ずっと強く心に残っていたんです。たった一度の人生ですから、後悔しないようにタレントとしてやっていく決心をしました」
常に3年後に自分がどうありたいかを考える
タレントに転身して約1年半が経過。その間、さまざまなテレビ番組やイベントに出演するなど、持ち前の明るさを発揮して、活躍の場を広げているが、本人いわく“稽古不足”を痛感する毎日だという。 「この間も『テレビよりも素のほうが面白いね』って言われました(苦笑)。カメラを前にすると、ついつい気負いもあって硬くなってしまって、動作や発言が不自然になることが多々あります。頭の中では、こうしよう、ああしようと、あれこれ想定しているんですけど、瞬時に思っていたようなリアクションができないこともあります。テレビ慣れしている芸人さんは、そのへんの反射神経は本当にすごいですよね。自分ももっと自然体でしゃべることができたらなと。それを心がけているというか、目指しています」 3年先の稽古──。これは豊ノ島さんが現役時代から座右の銘にしている言葉だ。 「6歳のときに相撲を始めて、当時の指導者から『3年先の稽古だぞ』って言われて、そのときは意味も分からないまま、ただ『はい』と答えていたんですよ(笑)。でも、大人になるにつれて、だんだんと分かってきたのが、目先の勝ち星のための稽古ではなくて、常に3年後に自分がどうありたいかを考えて、相撲に取り組むべきだと。そのような長期的な視野に立つことで、力士として、人間として大きく成長できるということを実感しました。これは、タレント活動を継続するうえでも大事な教訓だと思っています」 そんな豊ノ島さんにタレントとしての今後の目標やチャレンジしてみたいことについて聞いた。 「懇意にしているスポーツ新聞の記者さんと一緒に『豊ノ島の部屋』というトークイベントを定期的に開催しているんです。元力士が相撲の魅力や奥深さについて解説するテレビ番組やYouTubeって、ほとんどないと思うので、今後、自分が相撲の面白さを発信する番組をつくれたらと思っています。また、娘から『大柄のおじさんがキレキレのダンスをしていたら面白い』って言われて、TikTokをやろうという話もあがっています。ただ、そのへんは昭和生まれには、まったく分かりません(苦笑)。だから、娘にもアドバイスをもらいながら、親子でもいろいろ発信できたら面白いかなって」 (取材・文=大崎量平)